代理店・制作会社で時間が消えている4か所
広告代理店や制作会社の仕事は、外から見ると「企画を立てる」「クリエイティブを作る」「広告を運用する」という言葉で説明されます。しかし実際に人の時間を食っているのは、その周りにぶら下がっている段取りと確認の作業です。規模や得意領域を問わず、多くの会社で共通しているのは次の4か所です。
- 複数案件の進行と締切の管理:案件ごとにチャットのスレッドとスプレッドシートが分かれていて、全体の締切がどうなっているかは担当者の頭の中にしかない
- 月次の運用レポートの作成:媒体ごとに数字を書き出し、体裁を整え、所感を書き足す作業を、クライアントの数だけ毎月くり返している
- 媒体費・外注費の発注と請求の突合:請求書の金額を発注控えと1行ずつ目で照合し、ずれた分をメールをさかのぼって調べている
- 制作物の版管理と校正:最新版がどれかわからなくなり、修正指示が複数の経路から来て、誰の指示がどこまで反映されたかが追えない
この4つに共通しているのは、どれも企画力やクリエイティブの技能ではなく「情報が案件ごと・媒体ごと・経路ごとに散らばっているせいで、人が集めて並べ直している」という構造だという点です。判断や提案は人がやるとしても、集めて並べるところは道具に任せられます。そして、この種の道具は業務管理ツールの導入を待たなくても、現場の担当者が自分で用意できるところまで来ています。Claude Codeがどんなツールかをまだご存じない方は、こちらの入門記事から読むと以降の話がつかみやすくなります。
複数案件の進行と締切を1枚にする
代理店や制作会社の進行管理が苦しくなるのは、案件の数が増えたときではなく、案件ごとに情報の置き場所が違うときです。ある案件はチャットのスレッドで進み、別の案件はメールで指示が来て、また別の案件はクライアント側の管理ツールに書き込む。この状態だと、今週なにが締切なのかを知るために3か所を見に行くことになります。そして見落とすのは、たいてい忙しい週です。
ここで内製の効果が出るのは、置き場所を統一するのではなく、締切だけを1枚に集めて出すと決めたときです。各案件の進行表はいまの形のままでよく、そこから「今週締切のもの」「期日を過ぎて未完了のもの」「先方の確認待ちで止まっているもの」の3種類だけを毎朝抜き出す。これだけで、朝会で見るべき画面が1つになります。作り方の土台は案件・タスク管理ツールを非エンジニアが内製する手順で扱っています。
この構造でとくに効くのが、先方の確認待ちで止まっているものを分けて出す部分です。制作の現場で納期が押す原因は、社内の作業が遅れているからではなく、確認の返事が返ってこないまま日数が過ぎているケースが相当な割合を占めます。止まっている理由が「うちの作業」なのか「先方の返事待ち」なのかを分けて並べておくと、催促すべき先がそのまま一覧になります。確認や承認の経路そのものを整える作りは社内の承認フローを管理するツールの内製手順が近い形です。
あわせて作る価値があるのが、案件ごとの工数の記録です。受注時の見積と実際にかかった時間がどれくらいずれたかは、次の見積の精度に直結します。ところが工数の入力は現場に嫌われやすいので、項目を増やしすぎないことが続けるコツです。案件・日付・担当・時間の4つがあれば当面は足ります。作り方は工数・稼働時間を記録するツールを内製する手順にまとめています。
月次レポートを毎回ゼロから組み立てない
運用型広告を扱っている会社なら、月初の数日がレポート作成でつぶれる感覚はご存じのとおりだと思います。媒体の管理画面から数字を出し、決まった形の表に貼り、前月と比べ、グラフを作り、所感を書く。この一連の作業のうち、本当に人の頭を使っているのは所感の部分だけで、それ以外は毎月まったく同じ手順のくり返しです。
内製で置き換えられるのは、この「同じ手順のくり返し」の部分です。書き出したデータのファイルを読み込ませ、決めておいた形の表に整え、前月との差分を並べ、レポートの下地までを組み上げる。ここまでを道具にすると、担当者は所感を書くところから始められます。定型の集計を毎月自動で回す作りはKPIダッシュボードを毎月自動更新するツールの内製手順が土台になり、複数のファイルから数字を集めて整える部分はスプレッドシートの集計作業を自動化する手順がそのまま応用できます。
ここで気をつけたいのは、所感まで機械に書かせようとしないことです。数字の増減を説明する文章は、それらしいものがいくらでも作れてしまいます。しかし「なぜその月に伸びたのか」を知っているのは、入札の設定を変えた担当者や、クリエイティブを差し替えた制作者、あるいは先方の店頭施策を聞いている営業です。機械が書いた無難な説明をそのまま提出すると、次の打ち手につながらないレポートが積み上がっていきます。道具の役割は、数字を並べて差分が大きい箇所を目立たせるところまでにしてください。
レポートに載せる文章の下書きや言い回しの整えについては、生成AIの使いどころが別にあります。SNSの投稿案や広告文の案を複数出させて人が選ぶ形はSNS投稿文の案を作るツールの内製手順、日々の報告の体裁をそろえる形は日報ツールを非エンジニアが内製する手順で扱っています。マーケティング部門側から見た活用の全体像はマーケティング担当者のClaude Code活用、広報・PR領域の切り口は広報・PR担当者の内製ハンズオンにまとめています。
媒体費・外注費の請求を発注控えと突き合わせる
代理店の経理まわりで最も神経を使うのが、媒体費と外注費の突合です。案件の数だけ発注があり、月をまたいで請求が来て、途中で予算を追加したり止めたりした分がそのまま金額のずれになって現れます。そして、ずれを見つけたあとに「いつ誰がその変更を決めたか」をメールとチャットからさかのぼる作業が、いちばん時間を吸います。
ここで内製の効果が出るのは、発注の控えと請求の明細を同じ形に整えて機械に照合させると決めたときです。金額が一致する行はそのまま通し、一致しない行と、片方にしか存在しない行だけを人が見る。この分担にすると、人が確認する件数が大きく減ります。作り方は請求書と入出金の突合ツールを内製する手順で手順を追って解説しています。発注から納品・請求までの状態を1行1件で追う部分は発注と納期を管理するツールの作り方、外注先ごとの単価がばらついている場合は仕入先別の価格表を整えるツールの内製手順を組み合わせてください。
クライアントへの請求側も同じ考え方が使えます。案件ごとの請求予定と、実際に入金があったかどうかを1枚に並べておくと、回収の遅れが早い段階で見えます。作り方は売掛金の入金予定と滞留を管理するツールの内製手順にまとめています。見積書そのものを毎回打ち直している場合は、明細から見積の形に整えるところまでを道具に任せられます。見積書作成ツールを非エンジニアが内製する手順が使えます。
なお、請求と支払いに関する書類の形式や保存の要件は、法令と自社の経理規程によって決まります。突合の作りを考える前に、どの書類をどの形で残す必要があるかを経理と確認してください。制度の内容は改正されることがあるため、必ず一次情報と顧問の専門家の指示にしたがって設計してください。
制作物の版管理と校正の下ごしらえ
制作の現場で消耗しやすいのが、版の取り違えです。修正指示がメールとチャットと打ち合わせの口頭から来て、それぞれ別のタイミングで反映される。結果として、いま手元にあるファイルが最新なのか、どの指示までが入っているのかが分からなくなる。入稿の直前にこれが起きると、事故に直結します。
ここは、道具にすると割に合う領域です。制作物ごとに、版と、その版で何を直したかと、誰の確認が済んでいるかを1行1件で並べるだけで、取り違えはかなり止まります。項目を増やしすぎないことが続けるコツで、対象・版・変更点・確認状況の4つがあれば当面は足ります。作り方は文書の版数・改訂履歴を管理するツールの内製手順で扱っています。過去の制作物や提案資料を探し出す部分は社内文書を検索できるようにするツールの作り方が土台になります。
校正についても、機械に任せられる部分と任せてはいけない部分がはっきり分かれます。表記のゆれ、送り仮名の不統一、社名や商品名の書き方が原稿ごとに違う、禁則にかかる表記が残っている——この種の機械的に検出できる指摘は道具の得意分野です。作り方は文章校正ツールを非エンジニアが内製する手順にまとめています。一方で、表現が誇大にあたらないか、根拠の示し方が適切かといった判断は、後述のとおり人が持つべき領域です。
機械に渡してはいけない判断の線引き
広告の仕事には、ツールに渡してはいけない部分がはっきりあります。導入の前にここを決めておかないと、あとで大きな手戻りになります。
第一に、表示の適正さに関する判断です。広告の表現が誇大にあたらないか、比較や効果の訴求に根拠が備わっているか、業種ごとに定められた表示の決まりに反していないか。これらは関係する法令と業界の自主基準にしたがって人が確認するものです。生成AIに広告文の案を出させること自体は有効ですが、出てきた表現をそのまま入稿しないでください。とくに、機械は「言い切ったほうが強い」文章を作りがちで、それは表示の適正さという観点ではもっとも危ない方向です。最終の確認は、社内の確認体制と媒体の審査基準にしたがって人が行ってください。
第二に、著作権と権利処理です。参考として集めた画像や文章、他社の広告表現、素材の利用条件、モデルや出演者の肖像の扱い——制作の現場は権利の判断が日常的に発生する場所です。生成AIに作らせた文章や画像をそのまま納品物に使えるかどうかは、契約の内容と使用するサービスの利用規約によって変わります。クライアントとの契約に生成AIの利用に関する取り決めがある場合は、それが最優先です。判断の考え方は生成AIと著作権・法務の論点整理にまとめていますが、実際の可否は必ず契約書と一次情報、そして専門家の確認にしたがってください。
第三に、クライアント情報と実績値の扱いです。代理店が預かる情報には、未発表の商品情報、販売の実数、広告の予算や単価、競合との比較資料といった、外に出てはいけないものが大量に含まれます。どの情報を生成AIに入力してよいかは、道具を作り始める前に文書で決めてください。何を入れてはいけないかの整理は生成AIに入力してはいけない情報の一覧に、社内で起きやすい漏えいの型と防ぎ方は情報漏えいを防ぐ社内ルールの作り方にまとめています。とくに複数のクライアントを担当する会社では、案件をまたいだ情報の混ざり込みが起きないように、扱うファイルの範囲を案件単位で区切る設計にしてください。
現場の担当者が自分で作り始める進め方
「作れると言われても、プログラムを書いたことがない」という方がほとんどだと思います。実際のところ、いま非エンジニアが最初に越えるべきなのはプログラミングの壁ではなく、自分の困りごとを言葉で正確に説明するという壁です。Claude Codeのようなツールは、日本語で「こういうファイルがあって、こう並べ替えて、こういう条件のものを抜き出したい」と伝えれば、その通りに動くものを組み立ててくれます。
進め方としては、次の順番をおすすめしています。
- 月次レポートの下地作りひとつから始める:進行も請求も版管理も一気に扱おうとすると必ず途中で止まります。毎月確実に発生していて、手順が決まっている1つに絞る
- いま使っているファイルをそのまま材料にする:新しい入力の型を現場に押しつけると使われません。すでに毎月開いているスプレッドシートを読ませて、出力だけを増やす形にする
- 差分が大きい箇所を目立たせるところまでにする:作ったその日から効くのは、たいてい「見るべき行を絞る」機能です。所感や提案の文章を書かせる方向には広げない
- クライアントの情報を入れる前に線引きを決める:試作の段階では、実在する案件や実績値を使わず、形だけ同じにしたダミーのデータで動かす。本番の情報を通すのは、扱いの決まりを文書にしてからにする
- 動いたらチームに見せて、次を決める:机上で仕様を固めるより、動くものを1つ見せたほうが「じゃあこれも」という次の要望が具体的に出てきます
この進め方を、自社の実際の業務を題材にして数日で一巡させるのが、AI CODEMYの研修の中身です。研修としての実施には人材開発支援助成金が使える場合があります。制度の要件や助成の内容は改正されることがあるため、生成AI研修に使える助成金の解説記事とIT導入補助金と研修の関係を確認のうえ、最新の情報は必ず所管の窓口でご確認ください。
まとめ:段取りの時間を企画に戻す
本記事の要点を整理します。
- 代理店・制作会社で人の時間を食っているのは、進行と締切の管理、月次レポートの作成、媒体費と外注費の突合、制作物の版管理という4つの段取り
- 進行管理は置き場所を統一しなくてよい。締切だけを1枚に集め、社内の遅れと先方の返事待ちを分けて並べる
- 月次レポートは下地作りまでを道具にする。所感は人が書く。機械が書いた無難な説明は次の打ち手につながらない
- 請求の突合は、一致する行を機械が通し、ずれた行と片側にしかない行だけを人が見る分担にする
- 制作物は対象・版・変更点・確認状況の4項目で並べる。表記ゆれの校正は機械の得意分野
- 表示の適正さ、著作権と権利処理、クライアント情報と実績値の扱いは人が持つ。ツールは見張りと下ごしらえに徹する
- 始め方は、月次レポートの下地作りひとつから。本番データを通すのは線引きを文書にしてから
広告代理店と制作会社は、扱う案件と関係者の多さのわりに、現場を支える道具が担当者の工夫に任されてきた業種です。そして、その道具をいちばんうまく作れるのは、どの案件がどこで止まりやすく、どの数字が毎月必要になるかを知っている現場の担当者です。業務管理ツールの入れ替えを待つより、自分たちで小さく作って育てるほうが速く、そして安く済む段階に来ています。
自社の進行管理・月次レポートを題材に、5日で内製できるチームへ
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無料相談(30分)本記事の業務の切り分けは、広告代理店および制作会社の一般的な業務の流れをもとにした整理です。広告表示の適正さに関する要件、著作権および肖像の取り扱い、請求と支払いに関する書類の形式や保存の要件は、関係する法令、業界の自主基準、媒体の審査基準、および個別の契約によって決まります。制度の内容は改正されることがあるため、適用の可否は必ず一次情報と専門家にご確認ください。助成金の要件・助成率も同様です。



