なぜ社内文書の検索を内製するのか
探し物に時間がかかるのは、文書の整理が下手だからではありません。業務が続くかぎり文書は増え続け、増えた分だけ「どこにあるか」を知る人が限られていくからです。現場では次のような困りごとが起きがちです。
- ファイル名では見つからず、一つずつ開いて中身を確かめるしかない
- 同じ内容の文書が複数の版で残っていて、どれが最新なのか判断できない
- 質問が特定の人に集中し、その人が不在だと業務が止まる
- 新しく入った人が、そもそも何という言葉で探せばよいのか分からない
この作業は「決まった置き場を決まった観点で探し、根拠を添えて示す」性質が強く、自動化と相性の良い領域です。全文検索の機能を持つサービスもありますが、社内の言い回しや略称、部署ごとのフォルダの分け方までは既製の仕組みに教え込めません。自社の言葉づかいと置き場のルールをそのまま反映できるのが内製の強みです。定型作業を見極めて自動化する考え方は繰り返し作業を自動化する進め方でも整理しています。情報システム部門でどこから内製に着手するかは情報システム部門でClaude Codeを使う進め方もあわせてご覧ください。
作るツールの全体像
今回作るのは、探したい内容を言葉で伝えると、指定したフォルダの文書を横断して該当箇所を示し、根拠を添えて答える小さなツールです。流れは次のとおりです。
- 対象の指定:手順書・議事録・仕様書など、探しに行ってよいフォルダの範囲をあらかじめ決めて渡す
- 質問の入力:「経費精算の締切はいつか」のように、ふだんの言葉で知りたいことを書く
- 該当箇所の抽出:対象フォルダの文書を読み、質問に関係する記述を拾い出す
- 根拠付きの回答:答えとあわせて、どのファイルのどのあたりに書かれていたかを必ず添える
- 未解決の記録:どこにも書かれていなかった質問を控えておき、文書を整える際の材料にする
大切なのは、「どこまで探しに行ってよいか」を最初に決めて渡しておくことです。人事評価や採用の資料など、担当者以外が見るべきでないフォルダが同じ場所に置かれていることは珍しくありません。対象を明示的に絞り、範囲外は読まないよう指示しておくことが肝心です。最初は一つの部署の手順書フォルダだけを対象にして動かし、精度を確かめてから範囲を広げていくと無理なく進められます。手順書そのものを整える工程は業務マニュアル作成ツールの作り方の考え方とも共通します。
用意するもの
準備するのは次の3つだけです。特別な開発環境は必要ありません。
- Claude Code:指示を出すと、必要なファイルを自動で作ってくれます。導入手順はClaude Codeのはじめ方を参照してください。
- 対象にする文書のフォルダ(十数件で十分):ふだん参照している手順書や議事録をそのまま置いたフォルダを用意すると、Claude Code が自社の書き方の癖をつかめます。
- 実際に寄せられる質問の例(数件):「あの申請はいつまでか」「この作業は誰の承認が要るか」といった実際の質問を数件そろえると、答え方の粒度を合わせやすくなります。
社内文書には、取引先名・個人情報・未公開の計画など、社外に出せない情報が含まれます。試す段階でも社内の管理ルールに沿って扱い、社外に出さない環境で作業してください。読ませる範囲を必要最小限に絞っておけば、うっかり機微な文書まで対象に含める事故も防げます。業務でAIを安全に使う考え方は業務AI利用時の情報漏えい対策で解説しています。
Claude Codeへの指示と作成手順
ここからは、実際にClaude Code へ出す指示の流れを順番に見ていきます。専門用語は使わず、ふだんの言葉で頼むのがコツです。
第一段階:探す範囲と目的を伝える。「このフォルダの中の文書を読んで、質問に答えてほしい」と目的を伝え、探しに行ってよいフォルダの範囲もあわせて渡します。「この二つのフォルダだけを対象にして、それ以外は読まないで」「答えるときは必ず根拠のファイル名を添えて」と条件を言葉で伝えると、Claude Code が土台のファイルを作ってくれます。
第二段階:答え方の型をそろえる。読み込みができたら、実際に寄せられる質問を数件渡し、期待する答え方を示します。「まず結論を一文で、次に根拠のファイル名と該当箇所を、最後に補足を」と型を決めておくと、誰が使っても同じ形の答えが返ってきます。文書に書かれていない事柄は推測で埋めず、見つからなかったとはっきり答えるよう指示しておくのが要点です。
第三段階:版の食い違いに対処する。同じ内容が複数の文書に書かれていて内容が食い違う場合は、どちらか一方を勝手に選ばせず、両方を示して食い違いがあると伝えるよう頼みます。更新日の新しいほうを優先しつつ、古い記述の存在も併せて挙げてもらえば、文書を片付けるきっかけにもなります。どれが正なのかの判断は人が持つ、という線引きを最初に決めておいてください。
第四段階:日々の運用に組み込む。運用が安定したら、「どこにも書かれていなかった質問を一覧に控えておきたい」といった要望も言葉で伝えれば調整できます。答えられなかった質問が溜まれば、それがそのまま文書を整える優先順位になります。完成したら操作の流れをメモに残しておくと、次回からはフォルダを指定するだけで検索が回ります。紙やPDFの資料から値を取り出す工程はPDFからのデータ抽出ツールの作り方もあわせてご覧ください。
つまずきやすい点と回避策
はじめて内製する方が引っかかりやすいポイントを、先回りしてお伝えします。
書かれていないことを、それらしく補ってしまうこと。文書のどこにも書かれていない締切や承認者を、文章の流れで自然に埋められてしまうと、間違った運用がそのまま社内に広まります。「対象の文書に書かれている範囲だけで答え、見つからない場合は見つからなかったと答える」よう指示し、根拠のファイル名が示せない答えは出さないと決めておいてください。
探す範囲を絞らずに任せてしまうこと。置き場全体をまとめて対象にすると、担当者以外が見るべきでない文書まで読み込まれかねません。対象フォルダを明示的に指定し、範囲を広げるときは何が含まれるかを確かめてからにしてください。最初は一部署の手順書だけで始め、実際の答えの質を見ながら段階的に広げるのが安全です。
古い文書が混ざったまま使い続けること。数年前の版が同じフォルダに残っていると、正しく探せていても古い答えが返ります。ツール側で更新日を添えて示すようにしつつ、答えが古いと気づいたらその場で元の文書を整理する、という運用をあわせて回してください。こうして流れを一度固めておけば、あとは対象フォルダを差し替えるだけで使い回せるのが内製の利点です。社内で作ったツールを長く使い続ける工夫は内製ツールの保守の進め方で解説しています。
まとめ:探す作業はツールに、正しさの判断は人に
本記事の要点を整理します。
- 探し物に時間がかかるのは整理の問題ではなく、文書が増えるほど在りかを知る人が限られる仕組みの問題
- 作るのは「対象フォルダの指定→質問の入力→該当箇所の抽出→根拠付きの回答→未解決の記録」の小さなツール
- 用意するのはClaude Code・対象にする文書のフォルダ・実際に寄せられる質問の例の3つだけ
- どこまで探しに行ってよいかの範囲を最初に決めて渡し、機微な文書を対象に含めない
- 根拠のファイル名を必ず添えさせ、書かれていないことは見つからなかったと答えさせる
探して読む作業はツールに任せ、どれが正しい記述かの判断は人が持つ——この役割分担を押さえれば、社内の問い合わせは「詳しい人に聞くしかない」状態から「誰でも根拠付きで自分で調べられる」運用へ近づきます。まずは自分の部署の手順書フォルダと、よく寄せられる質問を数件、Claude Code に渡すところから始めてみてください。研修費用を助成金で抑えながら内製人材を育てる進め方は生成AI研修に使える助成金で解説しています。
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