なぜ稟議・承認フローを内製するのか
稟議や承認の手続きは、判断そのものより「決められた形にそろえて出す」ところに手間がかかります。申請する人も確認する人も、次のような困りごとを抱えがちです。
- 毎回どの項目を書けばよいか思い出せず、過去の稟議書を探して書式をまねている
- 金額の内訳・目的・添付資料などの抜けがあり、差し戻しと再提出を何度も往復する
- 誰にどの順で回せばよいか(決裁ルート)が人によってばらつき、止まっている案件に気づけない
- 承認する側は、長い申請文のどこが要点か読み解くのに時間がかかる
この作業は「決まった項目を、決まった形にそろえて確認する」性質が強く、ツール化と相性の良い領域です。市販のワークフローシステムも便利ですが、自社の書式や決裁ルールに合わせようとすると設定や費用のハードルがあります。自社の稟議書の項目と決裁ルールをそのまま反映し、手元で下書きと確認を軽くできるのが内製の強みです。定型作業を見極めて自動化する考え方は繰り返し作業を自動化する進め方でも整理しています。同じ考え方でバックオフィス全般の業務を軽くする視点はバックオフィス業務をClaude Codeで効率化する方法もあわせてご覧ください。
作るツールの全体像
今回作るのは、稟議の内容を受け取り、自社の書式に整えて抜け漏れを確認し、承認しやすい形に整理する小さなツールです。流れは次のとおりです。
- 入力:稟議したい内容(件名・目的・金額・取引先・希望する期日など)を、箇条書きやふだんの言葉で渡す
- 下書き作成:自社の稟議書の項目と並びに沿って、文章の下書きを整える
- 抜け漏れチェック:必須項目が埋まっているか、金額の内訳や添付資料の記載があるかを確認し、足りない点を指摘する
- 要点整理:承認する人が短時間で判断できるよう、目的・費用・効果・期日を短くまとめる
- 一覧への記録:起票日・件名・金額・申請者・状態(申請中/承認済みなど)を一覧に書き出し、進み具合を見えるようにする
大切なのは、「自社の稟議書に必要な項目」と「決裁ルールの目安」を最初に決めて渡しておくことです。決裁区分や決裁者の順序は会社ごとに違うため、金額の基準や決裁者の並びは自社の決裁権限表をそのまま反映し、ツールに勝手な基準を作らせないことが肝心です。最初は下書き作成と抜け漏れチェックだけを対象にして動かし、慣れてから要点整理や一覧への記録を足していくと無理なく進められます。金額の妥当性や見積との突き合わせまで広げたい場合は請求書と発注の突合ツールの作り方の考え方も参考になります。
用意するもの
準備するのは次の3つだけです。特別な開発環境は必要ありません。
- Claude Code:指示を出すと、必要なファイルを自動で作ってくれます。導入手順はClaude Codeのはじめ方を参照してください。
- 自社の稟議書のひな形と、過去の稟議書(数件):実際に使っている書式と、通った稟議・差し戻された稟議を数件用意すると、Claude Code が自社の形と観点を正確につかめます。
- 必須項目と決裁ルールのメモ:「稟議書に必ず入れる項目」と「金額に応じた決裁区分・決裁者の順序」を自社の権限表どおりに書き出しておくと、意図が正確に伝わります。
稟議書には取引先名・金額・社内の意思決定といった、社外に出せない情報が含まれます。試す段階でも社内の管理ルールに沿って扱い、社外に出さない環境で作業してください。金額や取引条件などの数値は、ツールに推測で埋めさせず、必ず申請者が入力した値をそのまま使う設計にしておくと安全です。業務でAIを安全に使う考え方は業務AI利用時の情報漏えい対策で解説しています。
Claude Codeへの指示と作成手順
ここからは、実際にClaude Code へ出す指示の流れを順番に見ていきます。専門用語は使わず、ふだんの言葉で頼むのがコツです。
第一段階:やりたいことと自社の書式を伝える。「稟議したい内容を渡すと、自社の稟議書の形に整えて下書きを作りたい」と目的を伝え、自社のひな形と過去の稟議書を数件渡します。「項目は件名・目的・金額(内訳つき)・取引先・希望期日・効果の順にそろえてほしい」と出力の形も一緒に伝えると、Claude Code が土台のファイルを作ってくれます。
第二段階:抜け漏れチェックの観点をそろえる。下書きができたら、「必須項目が空欄なら指摘して」「金額に内訳がなければ足りないと伝えて」「見積書などの添付が前提の案件では、添付の有無を確認して」と、確認の観点を渡します。足りない項目は勝手に埋めず、どこが不足かを一覧で示してほしい、と頼んでおくと、事実の取り違えを防げます。
第三段階:承認者向けの要点整理を足す。下書きと確認が安定したら、「承認する人が短時間で判断できるよう、目的・費用・効果・期日を三〜四行にまとめて」と要点整理を頼みます。あわせて、自社の決裁権限表を渡して「この金額ならどの決裁区分・どの順で回すのが目安か」を示してもらうと、回付の迷いが減ります。決裁の基準は自社の権限表どおりに固定し、ツールに独自の金額基準を作らせないよう念を押しておきましょう。部門横断で見積や発注の観点も整えたい場合は購買・調達担当が自作する内製ツールも参考になります。
第四段階:申請状況の一覧に育てる。整理が安定したら、「起票日・件名・金額・申請者・状態を一覧に書き出したい」「新しい稟議を起こしたら、既存の一覧に追記する形にしたい」といった要望も言葉で伝えれば調整できます。状態を「申請中・承認済み・差し戻し」などで管理すれば、止まっている案件が一目で分かります。完成したら操作の流れをメモに残しておくと、次回からは内容を差し替えるだけで下書きと確認が回ります。見積書づくりまで一続きにしたい場合は見積書ジェネレータの作り方もあわせてご覧ください。
つまずきやすい点と回避策
はじめて内製する方が引っかかりやすいポイントを、先回りしてお伝えします。
金額や取引条件を下書きの勢いで作ってしまうこと。金額・内訳・取引先・期日は、文章を整える流れで数字が丸められたり、それらしい値に置き換わったりすると、決裁の前提が崩れます。これらは「申請者が入力した値をそのまま使い、推測で補わない」よう指示し、下書きができたら申請者が原本と突き合わせて確認してください。数字は人が確定させ、文章の体裁だけツールに任せるのが安全です。
決裁ルートをツールに判断させてしまうこと。決裁区分や決裁者の順序は会社の権限規程で決まっており、そこをツールに推測させると実態と食い違います。決裁ルートは自社の決裁権限表をそのまま渡し、ツールには「この表に沿って目安を示すだけ」と役割を限定してください。最終的に誰へ回すかは、規程に照らして人が確定させる前提にしておきましょう。
社内の意思決定情報を無防備に扱うこと。稟議書は取引先や金額、投資判断といった機微な情報の集まりで、一覧にすると持ち出しやすくなる分だけ管理が重要になります。保管場所と閲覧できる人の範囲を決め、社外に出さない環境で扱ってください。こうして手順を一度固めておけば、あとは内容を差し替えるだけで使い回せるのが内製の利点です。経費や費用のチェックとあわせて進めたい場合は経費精算チェックツールの作り方も参考になります。
まとめ:金額と決裁は人が確定させ、下書きと確認はツールに
本記事の要点を整理します。
- 稟議・承認は、決められた形にそろえて確認する部分に時間がかかる業務課題
- 作るのは「内容の入力→下書き作成→抜け漏れチェック→要点整理→一覧への記録」の小さなツール
- 用意するのはClaude Code・自社のひな形と過去の稟議書・必須項目と決裁ルールのメモの3つだけ
- 金額・取引条件は申請者の入力どおりに使い、ツールに推測で補わせない
- 決裁ルートは自社の権限表どおりに固定し、機微な情報の保管と閲覧範囲を決めて扱う
金額と決裁ルートは人が確定させ、下書きと抜け漏れの確認という手間はツールに任せる——この役割分担を押さえれば、稟議のやり取りは差し戻しの往復から「一度で通る申請」へ近づきます。まずは手元のひな形と過去の稟議を数件、Claude Code に渡すところから始めてみてください。Excel中心の運用から整えたい場合はExcelをAIで自動化する方法もあわせて参考になります。
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