保育の現場で時間が消えている4か所
保育園の仕事は、外から見ると「子どもを預かって保育する」の一言で説明されます。しかし現場の時間を食っているのは、その前後にぶら下がった記録と手続きと配置の作業です。定員の規模や公立か私立かを問わず、多くの園で共通しているのは次の4か所です。
- 園児ごとの記録が、紙とノートとアプリに分かれている:連絡帳、日誌、けがや体調の記録、個別の指導計画。同じ子どもの話なのに書く場所が違い、あとから「この子の先月の様子」を辿ろうとすると何冊もめくることになる
- 期限のある決まりごとが個人の記憶で回っている:毎月やらなければならない訓練、年に決まった回数の健康診断、職員向けの研修。どれも「今月はまだだった」と誰かが思い出したときに動き出している
- 職員の配置を毎日その場で数え直している:休みや遅番の入れ替わりがあるたびに、今日のこのクラスは足りているかを頭の中で計算し直す。シフトを組む作業そのものも、月末の数日を丸ごと持っていく
- 保護者への連絡と申し送りが、当日の担任の中でしか共有されない:お迎えの変更、体調の相談、翌日の持ち物の連絡。受けた職員が伝え忘れれば、そこで途切れる
この4つに共通しているのは、どれも保育の専門性ではなく「日付と人数と記録が、ノートと紙と個人の記憶に散らばっているせいで、誰かが定期的に思い出して確認しに行っている」という構造だという点です。子どもをどう見るかの判断は人がやるとしても、集めて期限の近いものを目立たせるところは道具に任せられます。そして、この種の道具は園務支援システムの入れ替えを待たなくても、業務を知っている本人が自分で用意できるところまで来ています。Claude Codeがどんなツールかをまだご存じない方は、こちらの入門記事から読むと以降の話がつかみやすくなります。書類の負担という点では介護事業の記録と加算の管理を扱った記事、子どもを預かる事業という点では学習塾の在籍と連絡の管理を扱った記事も業務の構造が近いので参考になります。
園児ごとの記録と、保護者への連絡を1か所に集める
園が持つ記録は、法令の側からも求められています。児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第十四条は、児童福祉施設には、職員、財産、収支及び入所している者の処遇の状況を明らかにする帳簿を整備しておかなければならないと定めています。つまり「どの子にどう関わったか」を残しておくことは、園の裁量で決めてよい任意の作業ではありません。
それでも記録が苦しいのは、量が多いからではなく、同じ子どもの情報が目的ごとに別の場所へ書かれるからです。保護者に渡す連絡帳、園として残す日誌、けがや体調変化の記録、個別の計画。書く相手が違うので様式も置き場所も分かれ、結果として一人の子どもの一年をつなげて見られる場所がなくなります。
ここで内製が効くのは、様式を統一することではありません。いま書いているものをそのまま材料にして、園児と日付で串刺しにできる状態を作ることです。園児・日付・記録の区分・書いた職員・本文という5項目に整理しておけば、「この子の直近1か月」も「今週けがの記録が出た子」も、めくらずに取り出せます。日々の記録を型にして残す作りは日報を集める仕組みの内製手順、けがやヒヤリハットのように後から傾向を見たいものはヒヤリハット・安全報告を集めるツールの内製手順が土台になります。
保護者からの連絡も同じ形で扱えます。お迎えの時間の変更、翌日の欠席の連絡、気になることの相談。受けた日時・園児・用件の区分・伝える先・対応済みかどうかという最小限の項目で、当日の担任の頭の中にしか残らない状態は解消します。作りは電話の伝言を記録するツールの内製手順が近い形です。
ただし、記録には保存の考え方が必要です。園児の記録は本人と家庭の事情を含むもので、いつまで持ち、誰が見られるのかを決めないまま増やすと、後から扱いに困ります。どの記録をいつまで残すかを一覧にしておく作りは書類の保存年限を管理するツールの内製手順にまとめています。園ごとの具体的な保存の年限は、設置の形態や自治体の指導によって運用が異なりますので、所管の自治体の担当課にご確認ください。
毎月の訓練と年2回の健康診断を、期限の側から見張る
保育園には、回数と頻度が具体的に決まっている決まりごとがあります。ここは道具がいちばん素直に効く場所です。
実際に定められている内容を確認しておきます。児童福祉施設の設備及び運営に関する基準第六条第一項は、児童福祉施設においては、軽便消火器等の消火用具、非常口その他非常災害に必要な設備を設けるとともに、非常災害に対する具体的計画を立て、これに対する不断の注意と訓練をするように努めなければならないと定めています。そして同条第二項は、前項の訓練のうち、避難及び消火に対する訓練は、少なくとも毎月一回は、これを行わなければならないと定めています。毎月一回という頻度が明示されている点が重要です。
健康診断にも回数の定めがあります。同基準第十二条第一項は、児童福祉施設の長は、入所した者に対し、入所時の健康診断、少なくとも一年に二回の定期健康診断及び臨時の健康診断を、学校保健安全法に規定する健康診断に準じて行わなければならないと定めています。同条第四項は、児童福祉施設の職員の健康診断に当たつては、特に入所している者の食事を調理する者につき、綿密な注意を払わなければならないと定めており、子どもだけでなく職員の側にも目配りが求められています。
努力義務として定められているものもあります。同基準第九条の三第一項は、児童福祉施設は、感染症や非常災害の発生時において、利用者に対する支援の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画を策定し、当該計画に従い必要な措置を講ずるよう努めなければならないと定め、同条第二項は職員への周知と、必要な研修及び訓練を定期的に実施するよう努めることを、同条第三項は定期的な見直しを求めています。同基準第十条第二項も、感染症及び食中毒の予防及びまん延の防止のための研修並びに感染症の予防及びまん延の防止のための訓練を定期的に実施するよう努めなければならないと定めています。
これらはいずれも、やるべきことが決まっていて、抜けたことに気づく仕組みだけがないという状態に置かれがちです。内製で作るべきものは単純で、実施すべき事柄・頻度・前回の実施日・次の目安・担当者という5項目を並べた台帳です。そこから「前回から間が空いているもの」と「担当者が決まっていないもの」を抜き出す。それだけで、年度末に記録を遡って青くなる事態はほぼ消えます。作りは教育・訓練の記録を管理するツールの内製手順が土台になり、健康診断のように人ごとに受診の状況を追うものは健康診断の受診状況を管理するツールの内製手順が近い形です。
ここでひとつ、実務上の勘どころがあります。管理すべき日付は「期限そのもの」ではなく、そこから準備期間を引いた「着手すべき日」です。訓練は消防署との調整が要ることもあり、健康診断は嘱託医の都合で日程が決まります。台帳に持たせるのは実施予定日ではなく、動き始めるべき日にしてください。この逆算は、まさに道具が得意とする種類の計算です。
職員の配置とシフトを、基準を満たしているか見える形にする
保育園のシフトが他の業種と決定的に違うのは、人数が基準として定められている点です。同基準第三十三条第一項は、保育所には、保育士、嘱託医及び調理員を置かなければならないと定めています。そして同条第二項は、保育士の数は、乳児おおむね三人につき一人以上、満一歳以上満三歳に満たない幼児おおむね六人につき一人以上、満三歳以上満四歳に満たない幼児おおむね十五人につき一人以上、満四歳以上の幼児おおむね二十五人につき一人以上とすると定め、ただし、保育所一につき二人を下ることはできないとしています。
つまり園のシフトは、希望を集めて割り振れば終わりではなく、その日その時間に、年齢の区分ごとに必要な人数が立っているかという条件を毎回満たしていなければならないものです。この確認を人が毎日その場でやっているのが、多くの園の実情ではないでしょうか。
だからこそ、内製の狙いどころははっきりしています。シフトを機械に組ませようとすると失敗します。誰と誰を同じクラスに置くか、誰が新人と組むか、誰がその日の行事に出るかには、表に出ない事情が必ずあります。効くのは、組む作業そのものではなく、その手前と後ろです。手前では、希望や勤務不可の申し出を1か所に集めること。後ろでは、できあがった配置に対して「この時間帯は人が薄い」「この人が連続している」といった気になる箇所を出すこと。決めるのは人で、道具は見落としを指すところまでです。作りはシフト表を作成するツールの内製手順にまとめています。
実際に立っている人を押さえる側も要ります。基準は「配置の計画」ではなく「その日いる人」に対して意味を持つので、出退勤の実績が取れていないと確認が成立しません。作りは勤怠を記録するツールの内製手順が土台になります。
あわせて押さえておきたい定めがあります。同基準第三十四条は、保育所における保育時間は、一日につき八時間を原則とし、その地方における乳幼児の保護者の労働時間その他家庭の状況等を考慮して、保育所の長がこれを定めると規定しています。開所の時間と職員の勤務時間は別のものなので、延長の時間帯まで含めた配置は必ず分けて考えてください。
ただし、自園の配置が基準を満たしているかの最終的な判断を、内製した道具の出力に委ねないでください。加配の扱い、みなしの可否、認定こども園としての区分、自治体独自の上乗せなど、実際の当てはめには制度の解釈が関わります。道具の役割は「この時間帯は薄いかもしれない」と人の目を向けさせるところまでで、適否の判定は所管の自治体の基準と園の管理者が持ってください。
給食の献立とアレルギー対応——ここは道具に判断させない
給食は、園の中でもっとも準備の手間がかかる仕事のひとつです。同基準第十一条第四項は、調理は、あらかじめ作成された献立に従つて行わなければならないと定めており、献立を先に作ることそのものが求められています。同条第二項は、献立は、できる限り、変化に富み、入所している者の健全な発育に必要な栄養量を含有するものでなければならないとしています。
そのうえで、この節はほかと性格が違います。アレルギー対応は、内製の道具にもっとも近づけてはいけない領域です。誤食は子どもの命に直結します。何を除去するか、代替をどうするか、どの子にどの食材が該当するかの判断は、医師の診断と保護者との合意に基づいて園が決めるものであって、機械の出力を根拠にしてよい領域ではありません。こども家庭庁が公表している「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版)」では、医師の診断に基づく生活管理指導表が、医師と保護者と保育所をつなぐ様式として位置づけられています。まずこのガイドラインと自治体の指示に沿った運用を整えることが先で、道具はその後です。
そのうえで、道具に任せてよい範囲もあります。それは判断ではなく、照合が済んでいるかどうかの見張りです。たとえば、生活管理指導表が提出されている子どもの一覧に対して、更新の時期が来ているのに新しいものが出ていない子を抜き出す。除去の対応をしている子どもの一覧と、その日の献立の確認担当者が記録されているかを突き合わせて、確認の記録が空いている日を出す。どちらも扱っているのは「手続きが済んでいるか」であって、「この食材を出してよいか」ではありません。この線を引けるかどうかが、園でツールを作るときのいちばん大事な分かれ目です。
あわせて、日々の確認そのものは紙と声の二重確認を減らさないでください。道具を入れたことで現場のダブルチェックが省略されるなら、それは改善ではなく後退です。内製した仕組みは、既存の確認手順を置き換えるものではなく、その手順が回っているかを外から見張るものとして位置づけてください。
機械に渡してはいけない判断の線引き
保育の現場には、ツールに渡してはいけない部分がはっきりあります。導入の前にここを決めておかないと、あとで大きな手戻りになります。
第一に、子どもの育ちに関する評価と判断です。発達の状況をどう捉えるか、気になる様子をどう見立てるか、保護者にどう伝えるか。これらは保育士の職務そのものであり、機械の出力を根拠にしてよい領域ではありません。生成AIに子どもの様子を評価させて、それを記録や面談の材料にしないでください。生成AIは、それらしい文章を作ることに長けている一方で、事実と異なる内容を自信をもって出すことがあります。同基準第三十五条は、保育所における保育は、養護及び教育を一体的に行うことをその特性とし、その内容については、内閣総理大臣が定める指針に従うと定めています。保育の中身は指針に沿って人が組み立てるものであり、内製する道具の役割は、記録と期限と配置の見張りまでです。
第二に、園児と家庭の情報の扱いです。園が持つ情報は、氏名や連絡先だけでなく、健康状態、家庭の状況、発達の記録という、きわめて慎重に扱うべき情報を含みます。同基準第十四条の二第一項は、児童福祉施設の職員は、正当な理由がなく、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らしてはならないと定め、同条第二項は、職員であつた者が秘密を漏らすことがないよう必要な措置を講じることを施設に求めています。試作の段階では、実在する園児のデータを使わず、形だけ同じにしたダミーで動かしてください。生成AIに何を入力してはいけないかの整理は生成AIに入力してはいけない情報の一覧に、園内で起きやすい漏えいの型と防ぎ方は情報漏えいを防ぐ社内ルールの作り方にまとめています。個人が特定できる情報を扱わない範囲でも、届かないところに置いた道具が勝手に増えていくのは望ましくないため、誰が何を作ってよいかの枠組みは先に決めておくと安全です。考え方は部署ごとに増えるAI利用をどう管理するかにまとめています。
第三に、保護者からの苦情や相談への対応です。同基準第十四条の三第一項は、児童福祉施設は、その行つた援助に関する入所している者又はその保護者等からの苦情に迅速かつ適切に対応するために、苦情を受け付けるための窓口を設置する等の必要な措置を講じなければならないと定めています。受け付けた件を記録して未対応のものを抜き出すところまでは道具の仕事です。しかし返答の内容を機械に作らせないでください。相手のあるやりとりで、園として何をどう伝えるかは人が持つべき判断です。この線を曖昧にすると、道具が出した文面を根拠にしてしまう習慣ができ、いちばん危険な形になります。
園の担当者が自分で作り始める進め方
「作れると言われても、プログラムを書いたことがない」という方がほとんどだと思います。実際のところ、いま非エンジニアが最初に越えるべきなのはプログラミングの壁ではなく、自分の困りごとを言葉で正確に説明するという壁です。Claude Codeのようなツールは、日本語で「こういうファイルがあって、こう並べ替えて、こういう条件のものを抜き出したい」と伝えれば、その通りに動くものを組み立ててくれます。
進め方としては、次の順番をおすすめしています。
- 毎月の訓練と研修の台帳から始める:記録も配置も給食も一気に扱おうとすると必ず途中で止まります。判断の余地が少なく、頻度が法令で決まっていて、抜けたことがその場で分かる1つに絞る
- いまある一覧をそのまま材料にする:職員会議で使っている表も、事務室に貼ってある年間の予定表も、様式を変えずに読み込んで出力だけを増やす形にする。現場に新しい入力の型を押しつけない
- 見るべき行を絞るところまでにする:作ったその日から効くのは、たいてい「前回から1か月以上空いているものを出す」「担当者が決まっていない項目を出す」といった機能です。良し悪しの評価や保育の判断に広げない
- 本番のデータを入れる前に線引きを決める:園児を特定できる情報を試作に使わない。何を持たせて何を持たせないかを、動かす前に文書にする
- 動いたら他の職員にも見せて、次を決める:机上で仕様を固めるより、動くものを1つ見せたほうが「じゃあこれも」という次の要望が具体的に出てきます
日々のやるべきことを束ねる形まで広げるならタスク管理ツールの内製手順が続きになります。この進め方を、自園の実際の業務を題材にして数日で一巡させるのが、AI CODEMYの研修の中身です。研修としての実施には人材開発支援助成金が使える場合があります。制度の要件や助成の内容は改正されることがあるため、生成AI研修に使える助成金の解説記事とIT導入補助金と研修の関係を確認のうえ、最新の情報は必ず所管の窓口でご確認ください。
まとめ:思い出す時間を、子どもと過ごす時間に戻す
本記事の要点を整理します。
- 園で時間を食っているのは、園児ごとの記録、期限のある決まりごと、職員の配置、保護者への連絡という4つ
- 記録は様式を統一しようとせず、園児と日付で串刺しにできる状態を先に作る
- 避難及び消火の訓練は少なくとも毎月一回、定期健康診断は少なくとも一年に二回と定められている。台帳が持つのは実施日ではなく、着手すべき日
- 保育士の数は年齢の区分ごとに定められている。シフトは組ませず、希望を集めるところと、薄い時間帯を指すところに限る
- アレルギー対応は判断を渡さない。道具が扱うのは、手続きが済んでいるかの見張りだけ
- 子どもの育ちの評価、園児と家庭の情報の扱い、苦情への返答は人が持つ。道具は抜き出すところまで
保育園は、期限のある決まりごとと、人数の基準と、一人ひとりの記録が同時に走っているという、めずらしく密度の高い職場です。だからこそ、思い出して確認しに行くだけの作業に一日のかなりの時間が消えています。そして、その道具をいちばんうまく作れるのは、どのクラスがいつ薄くなるか、どの記録がどのノートにあるかを知っている現場の職員自身です。大がかりなシステムの入れ替えを待つより、自分たちで小さく作って育てるほうが速く、そして安く済む段階に来ています。
自園の記録・訓練・配置の管理を題材に、5日で内製できるチームへ
AI CODEMY は、5日間で社員が自分の業務課題を解決するツールを完成させる法人向け実践研修です。毎月の訓練の台帳、園児ごとの記録の串刺し、シフト希望の集約、保護者連絡の引き継ぎなど、御園の実務をそのまま題材にハンズオンで進めます。まずは無料相談でお気軽にご相談ください。
無料相談(30分)本記事の業務の切り分けは、認可保育所の一般的な運営の流れをもとにした整理です。本文中の法令については、児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(昭和二十三年厚生省令第六十三号)第六条第一項・第二項、第九条の三、第十条第二項、第十一条第二項・第四項、第十二条第一項・第四項、第十四条、第十四条の二、第十四条の三第一項、第三十三条第一項・第二項、第三十四条および第三十五条を、e-Gov法令検索で2026年9月10日に確認しています。アレルギー対応については、こども家庭庁が公表する「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版)」および所管の自治体の指示をご確認ください。自園への当てはめ、職員配置の適否、記録の保存方法および認定こども園としての取り扱いは、所管の自治体および専門家にご確認ください。制度の内容は改正されることがあります。助成金の要件・助成率も同様です。


