なぜ受講記録の管理を内製するのか
受講記録が行方不明になるのは、担当者の管理が甘いからではありません。研修を主催する部署、受ける本人、証跡を求められる管理部門が別々で、それぞれが自分の都合のよい形で持っているからです。現場では次のような困りごとが起きがちです。
- 誰が受け終わって誰が残っているのかが、主催部署に聞かないと分からない
- 資格や講習の有効期限が切れる直前まで気づかず、慌てて更新の手配をする
- 修了証や受講証明がメールの添付や個人のフォルダに散らばり、まとめて出せない
- 中途入社した人が過去の全社研修を受けていないことに、あとから気づく
この作業は「決まった対象者に、決まった研修を、期日までに受けてもらい、記録を残す」性質が強く、自動化と相性の良い領域です。既製の学習管理システムにも受講管理の機能はありますが、教材の配信やテストの採点まで含む大きな仕組みで、月額の費用や初期設定の負担が、社内研修と外部講習の記録を残したいだけの規模には見合わないこともあります。結局は担当者が手元のエクセルで別に管理し、二重管理になってしまう話も珍しくありません。自社が実際に追いかけている項目だけへ絞った身軽な台帳を作れるのが内製の強みです。定型作業を見極めて自動化する考え方は繰り返し作業を自動化する進め方でも整理しています。人事業務全体でClaude Codeをどう使うかは人事担当がClaude Codeを使う進め方とあわせてご覧ください。
作るツールの全体像
今回作るのは、誰がどの研修をいつ受けたかを記録し、期限が近いものを先に知らせ、未受講の人だけを抜き出せる小さなツールです。流れは次のとおりです。
- 対象者と研修の登録:氏名・所属と、社内研修や外部講習の名前を、ふだんの言葉で書き込んでおく
- 受講の記録:誰がどの研修をいつ受けたか、修了したかどうかを一件ずつ控える
- 有効期限の見張り:有効期限のある資格や講習について、期限が近づいたものを先に知らせる
- 未受講者の抜き出し:必ず受けてもらう研修について、まだ記録がない人だけを抜き出す
- 証跡の取りまとめ:受講の記録を対象者ごと・研修ごとに並べ直し、提出や報告に使える形で出す
大切なのは、最初からあらゆる研修を台帳に載せようとしないことです。任意参加の勉強会や個人の自己学習まで一度に入れようとすると、記録の手間が増えて続かなくなります。まずは氏名・研修名・受講日・有効期限の四つだけで動かし、対象も「全員に必ず受けてもらうもの」と「期限のある資格」に限って始め、運用しながら足していくのが定着の近道です。入社時に受ける研修の割り当てまで一貫させたい場合は入社・退職手続きのチェックリスト管理ツールの作り方で作った手続きの展開に、受講の記録をつなげる形にすると二度打ちがなくなります。
用意するもの
準備するのは次の3つだけです。特別な開発環境は必要ありません。
- Claude Code:指示を出すと、必要なファイルを自動で作ってくれます。導入手順はClaude Codeのはじめ方を参照してください。
- いま使っている受講者リスト(数件で十分):主催部署が持っているエクセルや、修了証をまとめたフォルダの一覧で構いません。Claude Code が自社で実際に何を控えているかをつかめます。
- 研修にまつわる社内の決まりごと(数行で十分):「入社半年以内に必ず受ける」「この講習は数年ごとに更新が必要」「期限の一定期間前に案内を出す」といった、ふだん暗黙で回している約束事を数行そろえておくと、期限や対象者を自動で持たせられます。
受講記録には、氏名・所属・保有資格など、人に紐づく情報が含まれます。試す段階でも社内の個人情報の取り扱いルールに沿い、社外に出さない環境で作業してください。管理する項目を受講の管理に必要なものだけへ絞っておけば、評価や処遇に関わる情報まで抱え込む事故も防げます。業務でAIを安全に使う考え方は業務AI利用時の情報漏えい対策で解説しています。なお、法令で義務づけられた教育や、助成金の支給申請で求められる記録の残し方は制度で決まっているため、何をどの形で保存すべきかは最新の一次情報や管轄の窓口の確認と突き合わせてください。
Claude Codeへの指示と作成手順
ここからは、実際にClaude Code へ出す指示の流れを順番に見ていきます。専門用語は使わず、ふだんの言葉で頼むのがコツです。
第一段階:いまの受講者リストをそのまま渡す。「社内研修と外部講習の受講記録をまとめて管理して、未受講と期限切れを取りこぼさない仕組みを作りたい」と目的を伝え、いま使っている受講者リストを数件分渡します。「氏名・所属・研修名・受講日・修了したかどうかを控えている」と、手元の管理の中身をそのまま言葉で伝えれば、Claude Code が台帳の土台を作ってくれます。まずは直近に実施した一つの研修分を入れて、いつもの見え方で並ぶかを確かめます。
第二段階:有効期限を決まりごとから自動で持たせる。台帳が整ったら、「この講習は受講日から数年で更新が必要」「更新の案内は期限の一定期間前に出す」と、期限のつけ方を伝えます。受講日を入れるだけで次の期限が決まる形にしておくと、本人の記憶に頼らず済みます。期限の年数は資格や講習ごとに違うので、研修の登録側に持たせておけば、選んだ研修に合わせて期限が変わります。何年で更新かは制度や主催団体の定めに従うため、自社で勝手に決めず、根拠のある値を登録してください。
第三段階:未受講者を機械的に抜き出させる。「必ず受けてもらう研修について、対象者のうち受講の記録がない人だけを、所属ごとにまとめて教えてほしい」と伝えれば、その形で抜き出せます。名簿と受講記録を人が突き合わせる作業がなくなるのが利点です。中途入社した人にも過去の全社研修が漏れなく当たるよう、対象は入社日ではなく在籍者名簿から取る、と指示しておくと取りこぼしが減ります。誰がいつまでに何をやるかの管理まで広げたい場合はタスク管理ツールの作り方と組み合わせると、案内から完了までが一つの流れでつながります。
第四段階:証跡を出せる形に整える。「対象者ごと・研修ごとに受講の記録を並べ直して、そのまま提出できる一覧にしたい」と伝えれば、報告や監査の求めに応じた形で出せます。修了証のファイルを保管している場所を記録に添えておけば、原本を探し回る手間もなくなります。完成したら操作の流れをメモに残しておくと、担当が交代しても同じ形で回せます。
つまずきやすい点と回避策
はじめて内製する方が引っかかりやすいポイントを、先回りしてお伝えします。
あらゆる学びを台帳に載せようとすること。任意参加の勉強会・書籍の読了・自己学習の時間まで最初から記録しようとすると、入力の手間が増えて続かなくなります。まずは「全員に必ず受けてもらう研修」と「有効期限のある資格や講習」だけに絞ってください。この二つは取りこぼすと実害が出るため、記録する動機が現場に残ります。任意のものは、台帳が実務で使われるようになってから足すほうが確実です。
期限や必要な記録の中身をツールに決めさせること。Claude Code は期限が近いものを抜き出すのは得意ですが、その資格が何年で更新なのか、法令や助成金の要件としてどの記録を残すべきかといった判断まで肩代わりできるわけではありません。要件は制度で決まっており、変更されることもあります。何年で更新か・何を残すかは最新の一次情報や管轄の窓口で固め、ツールはその決めた期限と項目が抜けていないかの見張りに使う——この線引きを守ってください。助成金を使う場合の要件や期限の扱いは生成AI研修に使える助成金もあわせてご確認ください。
作ったあと誰も見に来なくなること。受講記録の台帳は、期限が迫ったときにだけ価値が出る仕組みです。見る入り口を決めておかないと、記録は溜まるのに気づく人がいない状態になります。「毎月はじめに、期限が近い資格と未受講の人だけを確認する」といった、見る場面を一つ決めておくのが効果的です。こうして流れを一度固めておけば、あとは同じ形で使い回せるのが内製の利点です。社内で作ったツールを長く使い続ける工夫は内製ツールの保守の進め方で解説しています。
まとめ:記録と見張りはツールに、要件の判断は人に
本記事の要点を整理します。
- 受講記録が行方不明になる原因は管理の甘さではなく、主催部署・本人・管理部門がそれぞれ別の形で持っていること
- 作るのは「対象者と研修の登録→受講の記録→有効期限の見張り→未受講者の抜き出し→証跡の取りまとめ」の小さなツール
- 用意するのはClaude Code・いま使っている受講者リスト・研修にまつわる社内の決まりごとの3つだけ
- 管理する項目は氏名・研修名・受講日・有効期限の四つから始め、任意参加のものまで盛り込みすぎない
- 更新年数や残すべき記録の判断は最新の一次情報と管轄の窓口に、期限の見張りと未受講者の抜き出しはツールに任せる
記録の突き合わせと期限の見張りはツールに任せ、何を必ず受けてもらうか・どの記録を残すかの判断は人が持つ——この役割分担を押さえれば、受講記録の管理は「聞いて回らないと分からない」状態から「見れば分かる」運用へ近づきます。まずは直近に実施した一つの研修分を、Claude Code に渡して台帳にするところから始めてみてください。社内に内製できる人を育てていく進め方は社内のAI人材をリスキリングで育てる進め方もあわせてご覧ください。
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