整骨院・接骨院で時間が消えている4か所
整骨院や接骨院の仕事は、外から見ると「施術をすること」が中心に見えます。しかし院長や受付の担当者の時間を食っているのは、施術そのものよりも、患者さん一人ひとりの来院を、資格の確認から施術録、月ごとの療養費の請求まで抜けなく進めるための記録と段取りです。一人で開業している院でも、柔道整復師が何人も勤める院でも、共通しているのは次の4か所です。
- 施術録の記載と保存:受領委任で扱う施術の施術録と、それ以外の施術録が同じ棚に混ざり、どの患者さんの施術がいつ完結したかが一目では分からない
- 月ごとの申請書と委任欄:申請書を月単位でまとめる時期になってから、委任欄の記入や負傷の原因の書き漏れに気づき、送付の締めの直前に慌てる
- 資格の確認と領収証・明細書:来院のたびの資格の確認や、領収証と明細書を渡したかどうかが、受付の担当者の手元の運用にしかない
- 施術所の届出と受領委任の申出の変更:勤める柔道整復師が入れ替わったときや、施術管理者が代わったときの届出と申出が、院長の頭の中の予定にしかない
この4つに共通しているのは、どれも施術の技術ではなく「判断の材料が施術録・申請書の控え・受付の記録・人の予定に分かれていて、人が集めて突き合わせている」という構造だという点です。負傷を見て施術を決めるのは柔道整復師がやるとしても、集めて突き合わせるところは道具に任せられます。Claude Codeがどんなツールかをまだご存じない方は、こちらの入門記事から読むと以降の話がつかみやすくなります。医療の側から見た記録の持ち方は、クリニックの内製を扱った記事にもまとめています。
施術録は受領委任の分を分けて持ち、施術が完結した日から保存の期間を数える
施術録でいちばん困るのは、書いたつもりの施術の記録が遅れていたり、保存の期間をいつから数えるかが患者さんごとにあいまいなまま、紙の束が年々増えていくことです。来院のたびに書き足す記録は、忙しい日ほど後回しになります。どの負傷の施術がいつ完結したかが記録の中に埋もれていると、処分してよい時期も分かりません。
厚生労働省保険局長の通知「柔道整復師の施術に係る療養費について」の別添に定められた受領委任の取扱規程の22は、開設者及び施術管理者は、受領委任に係る施術に関する施術録をその他の施術録と区別して整理し、施術管理者及び勤務する柔道整復師が患者に施術を行った場合は、当該施術に関し、必要な事項を受領委任に係る施術に関する施術録に遅滞なく記載させるとともに、施術が完結した日から五年間保存することとしています。同じ規程の23は、骨折及び脱臼に対する施術を医師の同意を得て行った場合は、施術録にその旨を記載するとともに、申請書に記載することとしています。
形としては、患者さんごとに行を持つのではなく、負傷ごとに行を持ち、初めて施術した日、施術が完結した日、受領委任で扱うかどうか、医師の同意が要る負傷か、同意を得た日を、それぞれ別の欄で持ちます。来院ごとの記録は別の表に持ち、来院した日と、施術録に書いた日を分けて残します。道具には、次のものを抜き出させられます。
- 来院した日はあるのに、施術録に書いた日が空いている来院:前日の分を毎朝の受付の前に担当した柔道整復師ごとに並べる
- 医師の同意が要る負傷なのに、同意を得た日が空いている負傷:次の来院の予定が近い順に出す
- 施術が完結した日から数えて保存の期間を過ぎた施術録:処分してよいかを院長が決める材料として、年に一度まとめて出す
保存の期間を見張る作りは書類の保存年限管理ツールの内製手順がそのまま使えます。
申請書は月ごとに一人一枚にし、委任欄の自筆と送付の日を前もって確かめる
整骨院・接骨院で、仕組みとしていちばん手間がかかっているのが月ごとの療養費の申請書です。申請書を作る時期になってから、委任欄をご本人に書いてもらっていない、負傷の原因の欄が空いている、といった抜けが見つかると、患者さんの次の来院を待つことになり、送付が遅れます。
同じ規程の26は、施術管理者は保険者等に療養費を請求する場合は、申請書を月単位で作成すること、同一月内の施術については、施術を受けた施術所が変わらない限り申請書を分けず一の申請書において作成すること、申請書の「受取代理人への委任」欄は患者の自筆により被保険者の住所、氏名、委任年月日の記入を受けること(利き手を負傷しているなど患者が記入できないやむを得ない理由がある場合は、柔道整復師が自筆で代理記入し患者から拇印を受けること)、「負傷の原因」欄に該当する項目を記載すること、施術日が分かるよう記載することなどを定めています。令和8年6月1日付の通知(保発0601第5号)による改正で、正当な理由なく請求を遅らせることは認められないことも加えられ、令和8年7月1日から適用されています。また同じ規程の27は、施術管理者は申請書を保険者等ごとに取りまとめ、総括票を添付のうえ、原則として毎月10日までに保険者等へ送付することとしています(国民健康保険等の審査委員会が設置されている場合は国民健康保険団体連合会へ送付します)。
形としては、患者さんと月の組み合わせごとに行を持ち、その月に施術した日の一覧、委任欄をご本人に書いてもらった日、代理記入だったかどうか、負傷の原因の欄を書いた日、申請書を作った日、送付した日を、それぞれ別の欄で持ちます。保険者等の一覧は別の表に持ち、送付先ごとの取りまとめはそこから出します。道具には、次のものを出させられます。
- その月に施術した日があるのに、委任欄の記入を受けた日が空いている患者さん:月の後半に入ったら、次の来院の予定が近い順に受付へ並べる
- 負傷の原因の欄が空いている申請書:申請書を作る前の週に、担当した柔道整復師ごとに出す
- 送付の締めが近いのに、送付した日が空いている保険者等ごとの束:締めの近い順に院長へ並べる
同じ通知の改正では、保険者等が患者さんに注意を促す通知を送る対象として、令和9年1月以降において前月までの連続する12か月の間に通算して8月以上かつ9部位以上について施術を受けている患者が加えられています。院の側で、来院の月数と部位の数を患者さんごとに数えて並べておくと、施術の方針を見直す話し合いの材料になります。月ごとの締めを日付から数えて並べる作りはタスク管理ツールの内製手順が、請求した額と入金を突き合わせる作りは売掛金管理ツールの内製手順が近い形です。
資格の確認と領収証・明細書の交付は、来院ごとに記録を残す
受付で起きやすいのは、資格の確認をしたか、領収証と明細書を渡したかが、受付の担当者の手元でしか分からず、担当が代わった日に抜けることです。どれも来院のたびに繰り返す作業なので、記録を残さないまま慣れで回っていることが少なくありません。
同じ規程の18は、令和6年11月29日付の通知(保発1129第5号)による改正で、施術管理者は患者から施術を求められた場合は、オンライン資格確認又はその者の提出若しくは提示する資格確認書等によって療養費を受領する資格があることを確認することとしています。同じ規程の20は、施術管理者は患者から一部負担金の支払いを受けるときは、正当な理由がない限り領収証を無償で交付することとし、明細書交付機能が付与されているレセプトコンピュータを設置している施術所においては、正当な理由がない限り、一部負担金の計算の基礎となった項目ごとに記載した明細書を無償で交付すること、これに該当しない施術所においては、患者から求められたときは、正当な理由がない限り明細書を交付することとしています。
形としては、来院ごとの表に、資格を確認した方法と確認した日、一部負担金を受け取った日、領収証を渡したか、明細書を渡したか、渡さなかった場合はその理由を、それぞれ別の欄で持ちます。自院が明細書を無償で交付する側に当たるかどうかは、院の設定として別の表に一行で持たせます。道具には、次のものを出させられます。
- 来院したのに、資格を確認した日が空いている来院:その日の受付を閉める前に並べる
- 一部負担金を受け取ったのに、領収証を渡したかの欄が空いている来院:受付の担当者ごとに、その日のうちに出す
- 明細書を渡す側の院なのに、明細書の欄が空いている来院:週に一度まとめて院長へ出す
受付の担当の割り振りと合わせて持つなら、シフト作成ツールの内製手順と同じ作りで、日ごとの担当者と記録の抜けを並べられます。
施術所の届出と受領委任の申出の変更は、人の異動と一緒に並べる
来院ごとの記録とは別に、院そのものの届出と申出も見落としやすい場所です。どちらも毎日の施術とは離れたところにあり、柔道整復師が入れ替わる時期にまとめて抜けがちです。
柔道整復師法の第十九条第一項は、施術所を開設した者は、開設後十日以内に、開設の場所、業務に従事する柔道整復師の氏名その他厚生労働省令で定める事項を施術所の所在地の都道府県知事に届け出なければならないとし、その届出事項に変更を生じたときも同様とするとしています。同じ条の第二項は、施術所を休止し、又は廃止したときは、その日から十日以内に届け出なければならないとし、休止した施術所を再開したときも同様とするとしています。また受領委任の取扱規程の14は、施術管理者は、申し出ている施術所や勤務する柔道整復師に関する事項の内容に変更が生じたときは、速やかに地方厚生(支)局長と都道府県知事に申し出ることとし、施術管理者又は開設者が変更となった場合には、あらためて手続きを行うこととしています。
形としては、施術所ごとに、届出をした日と届け出た柔道整復師の一覧を持ち、勤める柔道整復師ごとに、勤め始めた日と辞める予定の日を持つ表を作ります。届出と申出の期限の数え方は、法令と通知を確かめたうえで別の表に持たせ、改正があったときにそこだけ書き換えられるようにしておきます。道具には、次のものを出させられます。
- 勤め始めた日や辞めた日があるのに、変更の届出をした日が空いている柔道整復師:数えた期限の近い順に院長へ並べる
- 施術所の届出と受領委任の申出で、届け出た柔道整復師の一覧が食い違っている施術所:月に一度まとめて出す
- 施術管理者が代わる予定がある施術所:手続きが要るかを確かめる材料として、予定が決まったその週のうちに出す
届出や更新の期限を見張る作りは許認可・免許の更新期限管理ツールの形でそのまま使えます。施術管理者の研修の受講の記録は、研修・資格の記録ツールの内製手順と同じ作りで持てます。
機械に渡してはいけない判断の線引き
整骨院・接骨院には、ツールに渡してはいけない部分がはっきりあります。導入の前にここを決めておかないと、あとで大きな手戻りになります。
第一に、施術の判断です。負傷の見立て、施術の内容と頻度、医師の診療を受けてもらうべきかどうかを決めるのは、患者さんを直接見ている柔道整復師の仕事です。道具は記録の抜けと期限を出すところまでにして、負傷名や施術の内容を提案する作りにはしないでください。
第二に、請求の当てはめです。ある施術が療養費の支給の対象になるか、負傷の原因をどの項目に当てはめるか、算定をどうするかは、施術の内容と患者さんの状況によって変わり、誤れば不正な請求につながります。道具が出すのは「この欄が空いている」という抜けまでにして、施術管理者が規程と算定の基準を確かめて決めてください。
第三に、広告や患者さんへの文面です。柔道整復師法の第二十四条は、柔道整復の業務又は施術所に関しては、柔道整復師である旨や施術所の名称、施術日又は施術時間など法令で認められた事項を除き、広告をしてはならないとしています。生成AIに院の案内文や広告の文面を書かせる場合も、載せてよい事項かどうかは院長が法令と所管の窓口の案内を確かめて決めてください。
第四に、患者さんの情報の扱いです。施術録や申請書には、患者さんの氏名、住所、保険の資格に加え、負傷の部位や原因、通院の履歴まで並びます。どれも外に出てはいけない情報の代表です。試作の段階では実在する患者さんの情報を使わず、形だけ同じにしたダミーのデータで動かしてください。生成AIに何を入力してはいけないかの整理は生成AIに入力してはいけない情報の一覧に、漏えいを防ぐ社内ルールの作り方は情報漏えいを防ぐ社内ルールの作り方にまとめています。
院長や受付の担当者が自分で作り始める進め方
「作れると言われても、プログラムを書いたことがない」という方がほとんどだと思います。実際のところ、いま非エンジニアが最初に越えるべきなのはプログラミングの壁ではなく、自分の困りごとを言葉で正確に説明するという壁です。Claude Codeのようなツールは、日本語で「今月施術した日がある患者さんのうち、委任欄の記入を受けた日が空いている方を、次の来院の予定が近い順に出したい」と伝えれば、その通りに動くものを組み立ててくれます。
進め方としては、次の順番をおすすめしています。
- 負傷ごとの表を最初に作る:患者さんと負傷の組み合わせを軸に、初めて施術した日から完結した日、医師の同意、月ごとの申請書までを一つの流れにそろえる。以降の抜き出しはすべてここから出す
- いま使っている記録をそのまま材料にする:受付の予約表、申請書の控え、紙の施術録を写した一覧は、形式がばらばらのまま読ませる。受付の担当者に新しい入力の型を押しつけない
- 抜けているものを出すところまでにする:作ったその日から効くのは「委任欄の記入が済んでいない方を、毎朝の受付の前に並べる」といった機能です。施術や請求の判断の方向には広げない
- 本番の情報を入れる前に線引きを決める:試作はダミーのデータで動かし、実際の患者さんの情報を通すのは、扱いの決まりを文書にしてからにする
- 動いたら院長と受付の担当者に見せて、次を決める:机上で仕様を固めるより、動くものを1つ見せたほうが「送付の締めの前の週だけ、保険者ごとの束を毎日出したい」という次の要望が具体的に出てきます
この進め方を、自社の実際の業務を題材にして数日で一巡させるのが、AI CODEMYの研修の中身です。研修としての実施には人材開発支援助成金が使える場合があります。制度の要件や助成の内容は改正されることがあるため、生成AI研修に使える助成金の解説記事とIT導入補助金と研修の関係を確認のうえ、最新の情報は必ず所管の窓口でご確認ください。
まとめ:来院ごとの記録を、月ごとの申請書の送付まで道具に追わせる
本記事の要点を整理します。
- 整骨院・接骨院で時間を食っているのは、施術録の記載と保存、月ごとの申請書と委任欄、資格の確認と領収証・明細書、施術所の届出と受領委任の申出の変更という4か所
- 施術録は受領委任の分を分けて負傷ごとに行を持ち、来院した日と書いた日を分け、施術が完結した日から保存の期間を数える
- 申請書は患者さんと月の組み合わせごとに行を持ち、委任欄の自筆、負傷の原因、送付した日を分けて残す
- 資格の確認と領収証・明細書の交付は来院ごとに記録を残し、受付の担当が代わっても抜けないようにする
- 施術所の届出と受領委任の申出は、柔道整復師の勤め始めと辞める予定と一緒に並べる。期限の当てはめは道具ではなく人が決める
- 施術の判断、請求の当てはめ、広告や患者さんへの文面、患者さんの情報の判断は、道具を入れても人の手元に残す
整骨院・接骨院は、患者さん一人ひとりの負傷に向き合いながら、療養費の請求という細かな決まりの多い手続きを毎月くり返す業種です。そして、その記録と段取りを見張る道具をいちばんうまく作れるのは、どの欄が書き漏れやすく、どの手続きが月末に詰まりやすいかを知っている院長や受付の担当者自身です。レセプトのシステムの入れ替えを待つより、自分たちで小さく作って育てるほうが速く、そして安く済む段階に来ています。
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無料相談(30分)本記事の業務の切り分けは、受領委任の取扱いを行う一般的な整骨院・接骨院の、受付から施術、月ごとの療養費の請求までの業務の流れをもとにした整理です。本文中の規定は、e-Gov法令検索に掲載されている柔道整復師法の第十九条、第二十四条(2025年6月1日施行の版)と、厚生労働省保険局長通知「柔道整復師の施術に係る療養費について」(平成22年5月24日付け保発0524第2号)の別添2「受領委任の取扱規程」の14、18、20、22、23、26、27、ならびにその一部改正の通知(令和6年11月29日付け保発1129第5号、令和8年6月1日付け保発0601第5号)を、地方厚生局の掲載資料で2026年10月15日に確認しています。受領委任の取扱いを契約で行う場合は別添1の協定の条項が適用されます。ある施術が療養費の支給の対象になるか、期限をいつと数えるかは、施術の内容や院の状況によって異なります。自院への当てはめは、地方厚生(支)局や都道府県の窓口、専門家にご確認ください。制度の内容は改正されることがあります。助成金の要件・助成率も同様です。



