マンション管理会社で時間が消えている4か所
マンション管理会社の仕事は、外から見ると「建物の管理」の一言で説明されます。しかしフロント担当者の時間を食っているのは、建物そのものよりも、管理組合という一つひとつ違う団体の手続きを、決められた期日どおりに回す作業です。担当する組合が数件の会社でも、数十件を抱える会社でも、共通しているのは次の4か所です。
- 総会と理事会の段取り:会日から逆算した招集通知の期限、議案の書き直し、議事録の署名の回収が、組合ごとの規約とメールの履歴に分かれている
- 管理受託契約の更新:契約の満了日、重要事項を記載した書面の交付、管理者への説明の日程が、契約書の束と担当者の手帳にしか残っていない
- 管理事務報告:組合ごとに事業年度の終わりが違うのに、報告書を作る順番が担当者の記憶で決まっている
- 修繕積立金等の口座の確認:毎月の口座の移し換えと保証契約の期間を、経理の担当者と表計算で見比べている
この4つに共通しているのは、どれも建物や設備の専門知識ではなく「情報が規約・契約書・会計の資料・メールに分かれていて、人が集めて突き合わせている」という構造だという点です。理事長と話して決めるのは人がやるとしても、集めて突き合わせるところは道具に任せられます。Claude Codeがどんなツールかをまだご存じない方は、こちらの入門記事から読むと以降の話がつかみやすくなります。清掃や設備点検の人員配置といった建物の現場の側の話は、ビルメンテナンス会社の内製を扱った記事にまとめています。
総会の招集は、組合ごとの規約の日数で数える
総会の段取りでいちばん事故が起きやすいのは、全組合を同じ日数で逆算しているときです。建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)の第三十五条第一項は、集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項及び議案の要領を示して、各区分所有者に発しなければならないとしたうえで、ただし書で、この期間は規約で伸長することができるとしています。実際には、規約でこの期間を伸ばしている組合が少なくありません。つまり、守るべき日数は法律の最低限ではなく、その組合の規約に書かれた日数です。
形としては、組合ごとの行に、規約で定めた招集通知の日数、規約の改正日、事業年度の終わりの月を持たせ、総会ごとの行には、会日、招集通知を発する期限、実際に発した日、通知した議題を持ちます。期限は会日と規約の日数から機械的に出せるので、道具には次のものを抜き出させられます。
- 招集通知の期限が近いのに、発した日がまだ空いている総会:期限が近い順に並べる
- 通知した議題と、議事録に記載された決議の項目が食い違っている総会:同法第三十七条第一項は、集会ではあらかじめ通知した事項についてのみ決議をすることができるとしています(同条第二項で、特別の定数が定められた事項を除き規約で別段の定めができます)
- 議事録の署名がそろっていない総会:同法第四十二条第三項は、議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した区分所有者の二人が署名しなければならないとしています
二つ目は、規約に別段の定めがあるかどうかで扱いが変わるため、道具には「食い違いがある」と並べさせるところまでにして、問題があるかどうかは担当者が規約を見て判断してください。議案は理事会で何度も書き直されるので、版ごとに残す作りは文書の版を管理するツールの内製手順が、議事録の下書きは議事録作成ツールの内製手順が、それぞれ土台になります。
契約の更新は、満了日から逆算して見張る
管理受託契約の更新は、何年かに一度しか回ってこないぶん、担当者が替わるとそのまま抜け落ちやすい手続きです。マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)の第七十二条は、更新のときに何をしなければならないかを、条件が変わるかどうかで分けています。
同条第二項は、従前の管理受託契約と同一の条件で更新しようとするときは、あらかじめ、管理組合を構成する区分所有者等全員に対し、重要事項を記載した書面を交付しなければならないとし、第三項は、管理者等が置かれているときは、その管理者等に対し、管理業務主任者をして、書面を交付して説明をさせなければならないとしています。これに対して、条件を変えて契約を結び直す場合は、第一項のとおり、あらかじめ説明会を開いて管理業務主任者に重要事項を説明させ、その説明会の日の一週間前までに、区分所有者等と管理者等の全員に、重要事項と説明会の日時・場所を記載した書面を交付する必要があります。
つまり、満了日だけを持っていても足りません。台帳には組合ごとに、契約の満了日、更新の条件を変えるかどうか、重要事項を記載した書面を交付した日、管理者等への説明の日、説明会を開く場合はその日を、それぞれ別の欄に持ちます。同法施行規則の第八十六条第一項は、管理受託契約を締結したつど帳簿に記載する事項として、締結した年月日、管理組合の名称、マンションの所在地と管理事務の対象となる部分、受託した管理事務の内容、受託料の額、特約その他参考となる事項を挙げているので、この帳簿の項目を台帳の土台にすると二重の入力を避けられます。道具には、満了日が近いのに書面を交付した日が空いている組合を、毎朝出させてください。条件を変える予定の組合は、説明会の日から一週間をさかのぼった日を期限として別に出します。契約の期限を一覧で見張る作りは契約書の期限管理ツールの内製手順が近い形です。
あわせて、同規則第八十六条第三項は、この帳簿を各事業年度の末日をもって閉鎖し、閉鎖後五年間保存しなければならないとしています。台帳の写しは見張り用と割り切り、保存すべき帳簿そのものの扱いは文書の保存期限を管理するツールの内製手順の考え方で別に持ってください。
管理事務報告は、組合ごとの事業年度で持つ
担当する組合が増えるほど重くなるのが、管理事務の報告です。マンション管理適正化法の第七十七条第一項は、管理事務の委託を受けた管理組合に管理者等が置かれているときは、定期に、その管理者等に対し、管理業務主任者をして管理事務に関する報告をさせなければならないとし、第二項は、管理者等が置かれていないときや、管理会社自身が管理者等であるときは、定期に説明会を開いて区分所有者等に報告させなければならないとしています。
そして同法施行規則の第八十八条第一項は、第七十七条第一項の報告について、管理事務を委託した管理組合の事業年度終了後、遅滞なく、報告の対象となる期間、管理組合の会計の収入及び支出の状況、管理受託契約の内容に関する事項を記載した管理事務報告書を作成し、管理業務主任者をして管理者等に交付して説明をさせなければならないとしています。報告の起点は管理会社の決算ではなく、組合ごとの事業年度の終わりです。三月に終わる組合もあれば、九月に終わる組合もあります。
形としては、組合ごとの行に事業年度の終わりの月と、管理者等が置かれているか(報告の相手が管理者等か、説明会か)を持ち、報告ごとの行に、対象となる期間、報告書を作った日、交付した日、説明した日、説明した管理業務主任者を持ちます。道具には、事業年度が終わったのに交付した日が空いている組合を、終わってからの日数が長い順に出させてください。区分所有法の第四十三条も、管理者は集会において毎年一回一定の時期にその事務に関する報告をしなければならないとしているので、通常総会の日程と並べて見られるようにしておくと、報告書の準備と総会の準備の重なりが先に分かります。月次の数字を集めて並べる作りはKPIダッシュボードの内製手順が参考になります。
口座の移し換えは、確認した日を毎月残す
マンション管理会社にとって、いちばん重い責任がかかるのが管理組合のお金です。マンション管理適正化法の第七十六条は、管理組合から委託を受けて管理する修繕積立金その他の財産を、自己の固有財産及び他の管理組合の財産と分別して管理しなければならないとしています。
その方法を定めた同法施行規則の第八十七条第二項第一号イは、区分所有者等から徴収された修繕積立金等金銭を収納口座に預け入れ、毎月、その月分として徴収されたものから当該月中の管理事務に要した費用を控除した残額を、翌月末日までに収納口座から保管口座に移し換えて管理する方法を挙げています(ロは修繕積立金を直接保管口座に預け入れる方法、ハは収納・保管口座で管理する方法です)。同条第三項は、イ又はロの方法で管理する場合には、区分所有者等から徴収される一月分の修繕積立金等金銭の合計額以上の額について有効な保証契約を締結していなければならないとし(ただし書の要件をすべて満たす場合を除きます)、第四項は、保管口座又は収納・保管口座に係る管理組合等の印鑑等を保管してはならないとしています(同項各号の場合を除きます)。
ここで道具に任せられるのは、お金を動かすことではなく、動いたことを確かめた日を残すことです。台帳には組合ごとに、どの方法で管理しているか、保証契約の期間の終わり、保証の対象としている金額を見直した日を持ち、月ごとの行には、移し換えの対象の月、移し換えを確認した日、確認した人を持ちます。道具には、翌月末日が近いのに確認した日が空いている組合と、保証契約の期間の終わりが近い組合を出させてください。入金や移し換えの明細との突き合わせは、入金管理ツールの内製手順と同じく、候補を並べるところまでにして、確定は経理の担当者が押す形にします。
機械に渡してはいけない判断の線引き
マンション管理会社には、ツールに渡してはいけない部分がはっきりあります。導入の前にここを決めておかないと、あとで大きな手戻りになります。
第一に、お金を動かすことと、会計の判断です。口座の移し換えや支払いを道具に実行させないでください。前の節で書いたとおり、道具の役目は確認した日を残し、空いている月を出すところまでです。管理事務に要した費用として何を控除するか、会計の数字をどう締めるかも、経理の担当者と管理組合が判断する部分です。
第二に、議案と決議の判断です。何を総会に諮るか、修繕をいつどこまで行うかは、管理組合が決めることです。管理会社は理事会を支える立場であり、道具が議案の結論を書くような作りは避けてください。議事録の下書きを作らせる場合も、議長と署名者が内容を確かめる前提で使います。
第三に、重要事項の説明と管理事務の報告そのものです。どちらも法律で管理業務主任者に説明させることになっている手続きです。書面の下書きや期限の見張りは道具に任せられても、説明をするのは人です。管理業務主任者の資格の期限を切らさない作りは資格・許認可の更新期限ツールの内製手順が使えます。
第四に、区分所有者の情報の扱いです。マンション管理適正化法の第八十条は、管理会社は正当な理由がなく業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならず、管理会社でなくなった後も同様としています。組合員名簿や管理費の滞納の状況は、外に出てはいけない情報の代表です。試作の段階では実在する組合や区分所有者の情報を使わず、形だけ同じにしたダミーのデータで動かしてください。生成AIに何を入力してはいけないかの整理は生成AIに入力してはいけない情報の一覧に、漏えいを防ぐ社内ルールの作り方は情報漏えいを防ぐ社内ルールの作り方にまとめています。
フロント担当者が自分で作り始める進め方
「作れると言われても、プログラムを書いたことがない」という方がほとんどだと思います。実際のところ、いま非エンジニアが最初に越えるべきなのはプログラミングの壁ではなく、自分の困りごとを言葉で正確に説明するという壁です。Claude Codeのようなツールは、日本語で「組合ごとの規約の日数と総会の会日から招集通知の期限を出して、発した日が空いている総会を期限の近い順に並べたい」と伝えれば、その通りに動くものを組み立ててくれます。
進め方としては、次の順番をおすすめしています。
- 組合ごとの行を最初に作る:規約の招集通知の日数、事業年度の終わりの月、契約の満了日、管理者等の有無を一つの行にそろえる。以降の期限はすべてここから出す
- いま使っているファイルをそのまま材料にする:契約の帳簿、総会の案内の控え、報告書の控えは、形式がばらばらのまま読ませる。現場に新しい入力の型を押しつけない
- 期限の近いものを出すところまでにする:作ったその日から効くのは「今月期限の手続きを組合ごとに並べる」といった機能です。お金を動かす方向や議案を書く方向には広げない
- 本番の情報を入れる前に線引きを決める:試作はダミーのデータで動かし、実際の組合員名簿や会計の数字を通すのは、扱いの決まりを文書にしてからにする
- 動いたら社内に見せて、次を決める:机上で仕様を固めるより、動くものを1つ見せたほうが「担当替えのときに、引き継ぐ期限を一覧で渡したい」という次の要望が具体的に出てきます
この進め方を、自社の実際の業務を題材にして数日で一巡させるのが、AI CODEMYの研修の中身です。研修としての実施には人材開発支援助成金が使える場合があります。制度の要件や助成の内容は改正されることがあるため、生成AI研修に使える助成金の解説記事とIT導入補助金と研修の関係を確認のうえ、最新の情報は必ず所管の窓口でご確認ください。
まとめ:組合ごとの暦を、道具に組み立てさせる
本記事の要点を整理します。
- マンション管理会社で時間を食っているのは、総会と理事会の段取り、管理受託契約の更新、管理事務報告、修繕積立金等の口座の確認という4か所
- 総会の招集通知は、法律の最低限ではなく組合ごとの規約の日数で期限を出す。通知した議題と決議、議事録の署名も並べて見る
- 契約の更新は、同一条件か条件変更かで手続きが違う。満了日に加えて、書面を交付した日と説明の日を別の欄で持つ
- 管理事務報告は、管理会社の決算ではなく組合ごとの事業年度の終わりから数える
- 口座の移し換えは道具に実行させず、確認した日を毎月残し、空いている月と保証契約の期限を出す
- お金、議案と決議、重要事項の説明と報告、区分所有者の情報の判断は、道具を入れても人の手元に残す
マンション管理会社は、規約も事業年度も契約の満了日も違う組合を同時に抱え、そのすべての期日を守ることが求められる仕事でありながら、その暦が契約書の束と担当者の手帳に任されてきた業種です。そして、その道具をいちばんうまく作れるのは、どの組合の総会がいつ立て込み、どの手続きが担当替えで抜けやすいかを知っているフロント担当者自身です。基幹システムの入れ替えを待つより、自分たちで小さく作って育てるほうが速く、そして安く済む段階に来ています。
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無料相談(30分)本記事の業務の切り分けは、分譲マンションの管理組合から管理事務を受託するマンション管理会社の一般的な業務の流れをもとにした整理です。本文中の規定は、e-Gov法令検索に掲載されている建物の区分所有等に関する法律の第三十五条・第三十七条・第四十二条・第四十三条、マンションの管理の適正化の推進に関する法律の第七十二条・第七十六条・第七十七条・第八十条、同法施行規則の第八十六条・第八十七条・第八十八条の現行の条文(いずれも2026年4月1日施行の版)を、2026年10月8日に確認しています。各管理組合の規約や管理受託契約に別段の定めがある場合は、その定めも確認してください。自社の運用への当てはめは、所管の地方整備局や専門家にご確認ください。制度の内容は改正されることがあります。助成金の要件・助成率も同様です。


