なぜ入退社手続きの管理を内製するのか
手続きが抜けるのは、担当者が不注意だからではありません。入社と退職の手続きは、やることの中身は毎回ほぼ同じなのに、担当が部署をまたいで分かれており、全体を一望できる場所がどこにもないからです。現場では次のような困りごとが起きがちです。
- 入社初日にパソコンや入館証が間に合わず、初日の業務が始められない
- 退職者のアカウントや権限が残ったままになり、あとから棚卸しで発見される
- 誰がどこまで済ませたのかが分からず、同じ確認の連絡が何度も行き交う
- 手続きの手順が前任者の頭の中にあり、担当交代のたびに抜けが再発する
この作業は「決まった項目を毎回同じ順で進め、期日までに終わったかを確かめる」性質が強く、自動化と相性の良い領域です。既製の人事システムにも手続き管理の機能はありますが、勤怠や給与まで含む大きな仕組みの一部であることが多く、手続きの抜け漏れだけを防ぎたい規模には重すぎます。結局は担当者が手元のエクセルで別に管理し、二重管理になってしまう話も珍しくありません。自社の手続きの流れそのままに、見たい項目だけへ絞った身軽なツールを作れるのが内製の強みです。定型作業を見極めて自動化する考え方は繰り返し作業を自動化する進め方でも整理しています。人事業務全体でClaude Codeをどう使うかは人事部門でClaude Codeを使う進め方とあわせてご覧ください。
作るツールの全体像
今回作るのは、入社予定者と退職予定者を登録すると、その人がやるべき手続きの一覧が並び、期日が近いものを抜き出して知らせてくれる小さなツールです。流れは次のとおりです。
- 対象者の登録:氏名・入社または退職の別・その日付・配属部署を、ふだんの言葉で一件ずつ書き込む
- 手続き一覧の展開:登録すると、あらかじめ決めた手続きの型がその人の分として並び、毎回一から書き出さずに済む
- 担当と期日の割り当て:それぞれの手続きに、誰がいつまでにやるのかを控え、入社日や退職日から逆算した期日を持たせる
- 期日が近い項目の抜き出し:今週と来週に動くべき手続きだけを抜き出し、担当ごとにまとめて手元に上げる
- 完了の記録:終わった手続きを済みにし、いつ誰が確認したかを一言残して、あとから追えるようにする
大切なのは、最初から手続きの型を作り込みすぎないことです。あらゆる雇用形態と部署の例外まで盛り込もうとすると、登録が煩雑になって使われなくなります。まずは氏名・区分(入社か退職か)・該当日・担当者の四つだけで動かし、手続きの型も自社で必ず発生するものに限って並べ、運用しながら足していくのが定着の近道です。期日が来たら知らせる仕組みそのものの作り方はタスク管理ツールの作り方でも扱っており、通知の考え方を流用できます。
用意するもの
準備するのは次の3つだけです。特別な開発環境は必要ありません。
- Claude Code:指示を出すと、必要なファイルを自動で作ってくれます。導入手順はClaude Codeのはじめ方を参照してください。
- 直近の入退社で実際にやった手続きの書き出し(数人分で十分):メールのやりとりや前任者のメモから拾い出したもので構いません。Claude Code が手続きの型の形をつかめます。
- 期日にまつわる社内の決まりごと(数行で十分):「入館証は初日の三営業日前までに手配する」「アカウントの停止は最終出社日当日に行う」といった、ふだん暗黙で回している約束事を数行そろえておくと、逆算した期日を自動で持たせられます。
入退社の情報には、氏名・所属・雇用にまつわる事項など、社内でも取り扱いを限る情報が含まれます。試す段階でも社内の管理ルールに沿って扱い、社外に出さない環境で作業してください。管理する項目を手続きの進み具合に必要なものだけへ絞っておけば、給与や個人の事情まで抱え込む事故も防げます。業務でAIを安全に使う考え方は業務AI利用時の情報漏えい対策で解説しています。
Claude Codeへの指示と作成手順
ここからは、実際にClaude Code へ出す指示の流れを順番に見ていきます。専門用語は使わず、ふだんの言葉で頼むのがコツです。
第一段階:手続きの型を伝える。「入社と退職の手続きの進み具合を一覧で管理する仕組みを作りたい」と目的を伝え、実際にやっている手続きを箇条書きで渡します。「入社なら雇用契約の締結・パソコンの手配・アカウントの発行・入館証の準備・初日の受け入れ担当の決定」「退職ならアカウントの停止・貸与品の返却・引き継ぎ資料の受領・入館証の回収」といった具合に、いま口頭で回している内容をそのまま言葉で伝えれば、Claude Code が型として並ぶ土台を作ってくれます。まずは直近の一人分を入れて、思ったとおりに並ぶかを確かめます。
第二段階:期日を日付から逆算させる。型が並んだら、「入社日の三営業日前までに終わらせる項目」「最終出社日当日に行う項目」と、それぞれの手続きがいつまでのものかを伝えます。入社日や退職日を入れるだけで各手続きの期日が自動で決まる形にしておくと、毎回手で日付を計算する手間がなくなります。ここで、貸与するパソコンや入館証など物の準備を伴う手続きは、手配に日数がかかる分だけ早い期日にしておくのが実務のコツです。備品の所在まで一体で追いたい場合は備品・IT資産管理ツールの作り方と組み合わせると、誰に何を貸したかがそのまま残ります。
第三段階:担当ごとに抜き出せるようにする。手続きには人事・情報システム・配属先の上長と、複数の担当が関わります。「今週やるべき項目を担当者ごとにまとめて見たい」と伝えれば、その形で抜き出せます。全体の一覧を全員に見せるのではなく、自分がやるべきことだけが手元に届く形にするのが、確実に動いてもらうための分かれ目です。承認を伴う手続きまで含めたい場合は稟議・承認フロー効率化ツールの作り方もあわせてご覧ください。
第四段階:日々の運用に組み込む。運用が安定したら、「全ての手続きが済んだ人は完了済みに移して、一覧を進行中の人だけにしたい」「毎週はじめに、その週に期日を迎える項目をまとめて見たい」といった要望も言葉で伝えれば調整できます。完成したら操作の流れをメモに残しておくと、担当が交代しても同じ形で回せます。手順そのものを文書として残す作業は業務マニュアル自動生成ツールの作り方と組み合わせると一貫します。
つまずきやすい点と回避策
はじめて内製する方が引っかかりやすいポイントを、先回りしてお伝えします。
手続きの型を細かく作り込みすぎること。正社員・契約社員・派遣・業務委託と区分ごとに別の型を用意し、部署ごとの例外まで盛り込むと、登録のたびにどれを選ぶか迷う仕組みになり、使われなくなります。まずは自社で最も件数の多い区分の型を一つだけ作り、例外は備考に一言書く運用から始めてください。型が実務で使われるようになってから、必要な区分だけを足すほうが確実です。
退職側の手続きを後回しにすること。入社の手続きは初日という締切がはっきりしているため自然と回りますが、退職の手続きは最終出社日を過ぎると誰も困らないため、そのまま忘れられがちです。ところが残ったアカウントや回収されない貸与品は、時間が経つほど手がつけにくくなります。退職の項目にも入社と同じように期日を持たせ、最終出社日の当日と翌週に確認の機会を必ず作ってください。
一覧を作っただけで安心してしまうこと。期日が近い項目を抜き出しても、誰がその一覧を見るのかが決まっていなければ、通知は素通りされます。「毎週はじめに人事担当がその週の一覧を確認し、担当ごとに投げる」といった、見る入り口を一つ決めておくのが効果的です。こうして流れを一度固めておけば、あとは同じ形で使い回せるのが内製の利点です。社内で作ったツールを長く使い続ける工夫は内製ツールの保守の進め方で解説しています。
まとめ:手続きの見張りはツールに、受け入れの中身は人に
本記事の要点を整理します。
- 手続きが抜ける原因は担当者の注意力ではなく、担当が部署をまたいで分かれ、全体を一望できる場所がないこと
- 作るのは「対象者の登録→手続き一覧の展開→担当と期日の割り当て→期日が近い項目の抜き出し→完了の記録」の小さなツール
- 用意するのはClaude Code・直近の入退社でやった手続きの書き出し・期日にまつわる社内の決まりごとの3つだけ
- 管理する項目は氏名・区分・該当日・担当者の四つから始め、手続きの型を作り込みすぎない
- 退職側の手続きにも入社と同じ期日を持たせ、最終出社日の当日と翌週に確認の機会を作る
期日を見張って抜けを知らせる作業はツールに任せ、初日の受け入れや引き継ぎの中身は人が持つ——この役割分担を押さえれば、入退社の手続きは「毎回誰かが慌てる」状態から「やるべきことが期日順に見える」運用へ近づきます。まずは直近の入社予定者を一人、Claude Code に渡して手続きの一覧にするところから始めてみてください。バックオフィス全体の業務でClaude Codeをどう使うかはバックオフィス業務でClaude Codeを使う進め方もあわせてご覧ください。研修費用を助成金で抑えながら内製人材を育てる進め方は生成AI研修に使える助成金もあわせてご覧ください。
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