なぜニュースの追いかけを内製で作るのか
情報を集める入口は、会社の中でばらばらに増えていきます。業界団体のお知らせ、所管の官庁の公表資料、取引先や競合のプレスリリース、専門誌のサイト、届いているのに読まれていないメールマガジン。入口が多いこと自体は悪いことではありませんが、束ねて眺める場所がないと、次のようなことが起きます。
- 毎朝同じサイトを順番に開き、前に見たものをもう一度読み直す時間が積み上がる
- 見た人の頭の中にしか残らないので、必要になったときに「あの記事」を探し出せない
- 担当者が休んだ週と異動した月に、追いかけがそのまま途切れる
- 取引先の重要な発表を、他社から聞かされて初めて知る
- 共有されるものが担当者の関心に寄り、別の部署に効く情報が落ちる
ここで扱っているのは「前に見た時点から増えたか」「あらかじめ決めた関心事に当たるか」という、突き合わせと絞り込みが中心の処理です。人が毎朝繰り返すには退屈で、機械に任せるには向いています。逆に「これは自社にとって重要か」「誰に伝えるべきか」という判断は、事業の文脈を知っている人にしかできません。市販の情報収集サービスやクリッピングの外注もありますが、対象媒体があらかじめ決まっていたり、自社が本当に気にしている数社の動きだけを見たいという段階には合わないことがあります。自社の関心事だけに絞った身軽な仕組みを先に作れるのが内製の強みです。競合の価格の変化を追う側は競合価格モニタリングツールの作り方で扱っています。本記事はそれとは別に、発表や記事といった文章の動きを束ねる側を扱います。
作るツールの全体像
今回作るのは、決めた情報源をひととおり確認し、前回から増えた分のうち関心事に当たるものだけを手元に残す小さなツールです。流れは次のとおりです。
- 情報源の登録:情報源の名前・確認した日・見出し・出典を、一件ずつ短く残す
- 増えた分の抜き出し:前回確認した時点より後のものだけを出し、既に見たものは繰り返さない
- 関心事での絞り込み:自社の取扱分野・主要な取引先・競合の社名など、決めた言葉に当たるものだけを残す
- 短い要約と理由づけ:一件ごとに数行の要約と、なぜ拾ったのかを添える
- 判断の記録:見た人が「共有する・様子見・関係なし」のどれを選んだかを残す
大切なのは、最初から項目を増やさないことです。業種の分類・重要度の点数・関連する自社案件・想定される影響額と並べたくなりますが、それらは記事を読んだ人が判断してはじめて決まるもので、集める段階で埋めようとすると、埋まらない欄ばかりの表になります。このツールが引き受けるのは、読むべきものを手元に集めるところまでです。読んで何をするかは人の側に残してください。最後の判断の記録も、三つ程度の選択肢から始めるので十分です。ここを丁寧に残しておくと、しばらく使ううちに「関心事の言葉が広すぎる」「この情報源からは何も拾えていない」といったことが見え、絞り込みを直す材料になります。集めたあとに社外向けの発信へつなげたい場合は、SNS投稿文の生成ツールの作り方の側の仕事として分けておくほうが、どちらも軽いまま続きます。
用意するもの
準備するのは次の3つだけです。特別な開発環境は必要ありません。
- Claude Code:指示を出すと、必要なファイルを自動で作ってくれます。導入手順はClaude Codeのはじめ方を参照してください。
- いつも見ている情報源のリスト(5件程度で十分):サイト名とページのアドレスを書き出したメモで構いません。最初から十数件並べるより、確実に読んでいるものだけに絞るほうがうまくいきます。
- 関心事の言葉のリスト(3〜5個):自社の取扱分野、主要な取引先や競合の社名、追いかけている制度の名前など。これが絞り込みの土台になります。
情報源を選ぶときは、提供する側が用意している入口を優先してください。多くのサイトは更新をまとめて配信する仕組みやメールでの配信を用意しており、それがあるならそれを使うのが確実です。ログインが必要な有料媒体や、利用規約で機械による取得を制限している先は、手で見出しを書き写す運用のままにして対象から外します。ここを確認せずに片端から取りに行くと、相手のサーバーに負担をかけたり、契約に反したりします。社外のサイトを扱う以上、まず規約を読むところから始めてください。社内の情報をAIに渡すときの考え方は業務AI利用時の情報漏えい対策で解説しています。
Claude Codeへの指示と作成手順
ここからは、実際にClaude Code へ出す指示の流れを順番に見ていきます。専門用語は使わず、ふだんの言葉で頼むのがコツです。
第一段階:情報源のリストをそのまま渡す。「毎朝いくつかのサイトを見て回っているので、更新されたものを一つの表にまとめて読めるようにしたい」と目的を伝え、手元のリストを渡します。整った形になっていなくても構いません。「情報源の名前・確認した日・見出し・出典を残したい」と項目を伝えれば、Claude Code が記録の土台と一覧の形を作ってくれます。ここで気をつけるのは、最初から全部の情報源をつなげようとしないことです。一件だけで動くところまで作り、実際に翌朝それを読んでみてから二件目を足してください。五件を同時に組み込むと、どこがうまくいっていないのかが分からなくなります。取得の仕方も、提供されている配信の仕組みが使えるならそれを優先し、無い先は当面手で入れる欄を用意しておく、という混在で構いません。
第二段階:前回から増えた分だけを出させる。「前に確認した日より後のものだけを出して、すでに見たものは出さないでほしい」と伝えます。ここが本記事でいちばん大事なところです。毎朝のこの作業がつらいのは、読む量が多いことではなく、大半がすでに読んだものだからです。増えた分だけを出す仕組みが入って初めて、毎朝の確認が数分で終わる作業になります。同じ発表が複数の媒体で報じられることもあるので、「見出しがよく似ているものは一つにまとめて、出典を並べて出してほしい」と足しておくと、同じ話を三回読まずに済みます。日付が本文に書かれていない情報源もあるため、確認した日を必ず記録に残しておいてください。「前回」を判断する基準がそこにしかない場面が出てきます。
第三段階:関心事で絞り込ませ、短い要約を付けさせる。「用意した言葉のどれかに当たるものだけを残して、一件ずつ数行の要約と、なぜ拾ったのかを添えてほしい」と伝えます。要約は、読むかどうかを決めるための手がかりであって、原文の代わりではありません。だからこそ、要約と一緒に出典のアドレスを必ず残すよう頼んでください。ここで多いつまずきが、関心事を広げすぎることです。業界名のような大きな言葉を入れると毎朝数十件が並び、結局誰も開かなくなります。まず社名や制度名のような具体的な言葉から始め、一週間ほど使って「拾えなかったもの」が出てきたら足していくほうが確実です。逆に、拾ったのに一度も共有されなかった言葉は外してください。判断の記録が、この見直しの材料になります。
第四段階:判断を記録して運用に乗せる。「読んだ人が共有する・様子見・関係なしのどれかを選んで残せるようにしてほしい」と伝えます。ここまで作ると、追いかけが個人の習慣から会社の仕組みに変わります。担当が交代しても、何を見ていて何を拾ってきたのかが前任者の記録として残るからです。そのうえで、朝の確認を誰がいつやるのかを決めてタスク管理ツールの作り方で作った一覧に載せておくと、担当者が休んだ日も途切れません。共有すると決めたものを会議で扱うなら、議事録作成ツールの作り方の側と組み合わせて、決まったことまで残す形にできます。集めた記録が増えてきて過去のものを探したくなったら社内文書検索ツールの作り方が使えます。完成したら操作の流れをメモに残しておくと、担当が交代しても同じ形で回せます。
つまずきやすい点と回避策
はじめて内製する方が引っかかりやすいポイントを、先回りしてお伝えします。
要約をそのまま社内報や社外向けの発信に転載すること。これが最も気をつけたい点です。手元に読みやすい要約が並ぶと、そのまま社内メールに貼りたくなり、やがて自社サイトやSNSにも流れていきます。しかし他社が書いた記事や発表の文章には権利があり、要約であっても元の表現に寄っていれば問題になり得ます。このツールが作る要約は、自社の中で読むかどうかを選ぶための手がかりまでにとどめ、外に出す文章は原文を読んだ人が自分の言葉で書いてください。出典のアドレスを必ず残しておくのは、そのためでもあります。生成AIを業務で使うときの権利まわりの考え方は生成AIと著作権・法務の論点で整理しています。
要約に書かれた数字や日付を、確かめずに社内で共有すること。要約は、元の文章を短くする過程で必ず何かを落とします。金額・時期・対象範囲・条件といった、判断を左右する部分ほど落ちやすく、言い切りの形に変わってしまうこともあります。制度の改正や取引先の発表を扱うなら、共有する前に必ず原文にあたり、数字と日付はそこから写してください。特に、社内の意思決定の材料にするものと、外部の相手に伝えるものは、要約だけで済ませないという線を引いておいてください。ツールが引き受けるのは「読むべきものを見つける」ところまでで、「事実を確定させる」のは人の仕事です。
取得の仕方を確かめないまま、機械的に取りに行くこと。相手のサイトへ短い間隔で何度も取りに行くと、相手のサーバーに負担をかけますし、利用規約で禁じられていることもあります。まず提供側が用意している配信の仕組みやメールでの受け取りを探し、それがある先はそちらを使ってください。無い先は、一日一回程度にとどめる、対象を絞る、あるいは手で入れる運用に切り替える、という判断が要ります。この判断はツールではなく人がするものです。作ったあとも情報源は入れ替わっていくので、動かなくなった先を放置しないよう、たまに見直す時間を取ってください。社内で作ったツールを長く使い続ける工夫は内製ツールの保守の進め方で解説しています。
まとめ:集めるのはツールに、読む価値の判断は人に
本記事の要点を整理します。
- ニュースの追いかけが途切れるのは、情報が多いからではなく、個人の習慣に閉じていて記録が残らないこと
- 作るのは「情報源の登録→増えた分の抜き出し→関心事での絞り込み→短い要約と理由づけ→判断の記録」の小さなツール
- 用意するのはClaude Code・情報源のリスト5件程度・関心事の言葉3〜5個の3つだけ
- いちばん効くのは前回から増えた分だけを出す仕組みで、毎朝の確認が数分で終わる作業に変わる
- 関心事は具体的な言葉から始め、判断の記録を見ながら足し引きする
- 要約は社内で読むかどうかを選ぶ手がかりまで。転載と、数字や日付の確認は人が持つ
集めるのはツールに任せ、読む価値があるかを決める判断は人が持つ——この役割分担を押さえれば、情報の追いかけは「担当者の頭の中にしかない習慣」から「誰が見ても同じものが手元に集まる仕組み」へ変わります。まずはいつも見ているサイトを一件だけClaude Code に渡して、増えた分を出すところから始めてみてください。集めた情報を計画づくりにつなげる進め方は経営企画がClaude Codeを使う方法、営業の現場で使う場面は営業がClaude Codeで内製する方法、バックオフィス全体の内製の進め方はバックオフィスがClaude Codeで内製する方法もあわせてご覧ください。研修費用の負担を抑えながら社内に内製できる人を増やす方法は生成AI研修に使える助成金もご確認ください。
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