なぜ人事こそ「使う」より「作る」なのか
人事の現場で生成AIを使う、と聞いてまず思い浮かぶのは、チャットに求人票の下書きや面接の質問案をつくってもらう使い方でしょう。それも有用ですが、毎回チャットに貼り付けて、出てきた結果を手でシートやメールに戻して——という手間が残り、採用や評価の集計そのものは手作業のまま変わりません。
本記事の主語は「使う」ではなく「作る」です。応募者の情報から採用票を決まった一覧にそろえる、部署から集まった評価シートを一つの表に集計する、就業規則にもとづいて社員のよくある質問に一次回答する、といった決まった作業を、毎回手で頼むのではなく現場の小さなツールにしてしまう。すると、その作業は決まった操作ひとつで終わるようになります。人事の業務は「採否や評価の最終判断は人が担うが、その周りの集計・整理・応答の手間が大きい」という構造をしているため、判断はそのまま人が担い、手間だけをツールに寄せる余地が特に大きいのです。
ここで鍵になるのがClaude Codeです。Claude Codeは、やりたいことを日本語で伝えると、プログラムの作成から実行までを対話で進めてくれるAIで、コードを一行も書かなくても、対話だけで動くツールを組み立てられます。だからこそ、人事の仕事の作法をいちばん分かっている担当者自身が作り手になれます。外注してシステムに仕様を伝えるより、現場の言葉でそのまま作るほうが、自社の評価制度や採用フローに合った道具ができあがります。人事全体でのAIの使いどころは人事のClaude Code活用を俯瞰する記事でも整理しているので、本記事の「作り方ハンズオン」とあわせてご覧ください。会社としてツールを内製する考え方の全体像はAIの内製化を進める記事でも扱っています。
ツール化しやすい人事の業務
人事の現場で、非エンジニアがツール化しやすい業務には次のようなものがあります。いずれも「判断は人がするが、集計・整理・応答の手間が大きい」作業です。
- 採用票・応募者情報の集計:応募者のシートやメールから、氏名・応募経路・希望条件・選考状況などを決まった一覧に転記してそろえる。採否の判断は担当者が行い、機械は一覧づくりの手間を担います。
- 人事評価の集計:部署ごとに集まった評価シートを一つの表にまとめ、点数の分布や記入もれを洗い出す。最終的な評価の決定と調整は人が行い、機械は集計と突き合わせの下ごしらえに使います。
- 労務FAQボット:就業規則や社内手続きにもとづき、「有給の申請はどうするか」「住所変更の手続きは」といったよくある質問に一次回答する。個別・例外的な判断は人事が引き取ります。
- アンケート・意識調査の集計:従業員サーベイの自由記述を、テーマ別に仕分けして傾向を要約する。手で読み込んでいた集計の手間を減らします。
共通するのは、「様式や項目は決まっているのに、毎回そろえ直す・集め直す・同じ答えを返す手間がかかる」点です。こうした定型作業はClaude Codeでの自動化がよく効く領域です。応募者の管理を専用に作り込む方法は採用管理ツールを作る手順で、アンケートの自由記述の集計はアンケート集計ツールを作る手順で詳しく解説しています。
5日で内製する進め方
「人事担当がツールを作る」と言われても、想像しづらいかもしれません。実際の進め方は、おおむね次の5日間の流れになります。これはAI CODEMYの研修で受講者が自分の業務ツールを完成させるときの組み立て方そのものです。
1日目:自分の困りごとを言葉にする。「どの集計や応答に、いつも何分とられているか」を棚卸しし、ツールにしたい1本を決めます。たとえば「応募が来るたびに、複数の経路から来た情報を採用票の一覧に転記するのに時間がかかる」。ここで問われるのはプログラミングの知識ではなく、自分の業務を言葉にする力です。
2日目:ダミーデータを用意して、たたき台を作る。本物の応募者や社員の氏名・連絡先は使わず、まずは差し替えたダミーの情報を用意します。そのうえでClaude Codeに作りたいものを伝え、最初の動くたたき台を出させます。一度で完璧を狙わず、動かしながら直す前提です。
3日目:自社の様式に合わせて直す。ダミーで動かし、「この項目も一覧に入れて」「評価の並び順は当社の評価区分に合わせて」と日本語で調整します。やり取りを繰り返して、自分の会社の作法にツールを寄せていきます。
4日目:同僚に見てもらい、運用の形を決める。同じ業務をするチームの同僚に試してもらい、誰がいつ使うか、出力をどこに保存するかといった運用の段取りを固めます。集計結果や一次回答を人がどう確認してから使うかも、ここで決めます。
5日目:ルールを確認して、本番運用へ。実データを扱う前に、会社の個人情報の取り扱いルール(クラウドに何を送ってよいか)を必ず確認し、扱う範囲を決めたうえで日々の業務に組み込みます。非エンジニアが最初の1本を組み立てる全体の進め方はClaude Codeで業務ツールを作る5ステップで詳しく解説しています。
指示の具体例
2日目にClaude Codeへ出す指示は、たとえば次のようなものです。採用票の集計ツールを想定しています。
「このフォルダにある応募者のメモ(テキスト)を読み込んで、当社の採用票の様式に沿った一覧にまとめてほしい。列は『氏名・応募経路・希望職種・選考状況・面接メモ』の順に並べて。メモに書かれていない項目は空欄のままにし、推測で埋めないこと。採否や評価にあたる判断は書かず、事実として書かれている情報だけを転記して」
このように、「何を読み取り」「どんな形に整え」「やってはいけないこと(書かれていない項目を推測で埋めない・採否の判断を書かない)」まで具体的に書くのがコツです。あいまいな指示ほど結果がぶれます。逆に、ここを丁寧に言葉にできれば、自社の様式や評価の作法をそのままツールに落とし込めます。特に人事では「メモにない事実を補完しない」「採否や評価の判断はツールに書かせず人に返す」という指示が重要で、AIが応募者の適性や評価まで断定してしまうと公平性や責任の所在があいまいになるため、補完と断定を禁じる一文を必ず添えます。指示の組み立て方そのものは業務で使えるプロンプトの書き方が参考になります。
個人情報・労務の注意点
人事でツールを使ううえで、丁寧に押さえたい注意点があります。
第一に、応募者や社員の個人情報はそのままクラウドに送らない。氏名・連絡先・経歴・評価・健康や家庭の事情といった情報は、慎重に扱うべき個人情報です。ツールを作る段階ではダミーデータだけを使い、本番でも何をクラウドのAIに送ってよいかは必ず会社のルールに従います。判断に迷う情報は入力しないのが安全です。AIに入れてはいけない情報の具体的な考え方は生成AIに入力してはいけない情報リストにまとめています。
第二に、採否・評価・労務の判断はツールに任せない。採用の合否や人事評価、労務上の取り扱いは、人事が責任を負って行うもので、AIが置き換えるものではありません。ツールにできるのは採用票を一覧に整える、評価シートを集計する、規則にもとづく一次回答をつくるまでで、その先の判断・決定・個別対応は必ず人が行います。ツールが出した集計や一次回答はあくまで下書きであり、内容が正しいか、規則や事実と合っているかの最終確認は担当者が行う前提で運用します。特に採否や評価に機械の推測を持ち込むと、公平性への疑義や不利益な取り扱いにつながりかねないため、判断は人に返す設計を徹底します。
第三に、情報漏えいを起こさない仕組みを先に決める。「どのツールに何を入力してよいか」を担当者任せにすると、思わぬ持ち出しが起こりえます。入力してよい情報の範囲や、使ってよいツールをあらかじめ会社で定めておく必要があります。組織として情報漏えいを防ぐ進め方は生成AIの情報漏えいを防ぐ記事で詳しく解説しています。従業員の機微な情報を多く扱う人事だからこそ、便利さより先に「入れてよい情報の線引き」を決めるのが出発点です。
研修・助成金で始める
「会社がツールを内製する」と言っても、最初のきっかけは独学では作りにくいものです。AI CODEMYは、5日間で受講者が自分の業務課題を解決するツールを完成させる法人向け実践研修で、人事のように特定の集計・応答業務を題材にした研修も可能です。他部署への内製の広げ方を知りたい方は営業のClaude Code活用もあわせてご覧ください。
費用面では、人材育成や業務改善を対象とした国の助成金を活用できる場合があります。どの制度がいくらの助成率で使えるかは、対象の要件や年度によって変わるため、厚生労働省などの公表資料を要確認です。AI CODEMYでは活用しやすい制度の整理から相談に乗っています。AI研修に使える助成金の解説に概要をまとめているので、まずはこちらをご覧ください。
まとめ:集める・そろえる・答える手間を自社の道具に変える
本記事の要点を整理します。
- 人事の生成AI活用は「使う」だけでなく、担当者自身が採用票集計・評価集計・労務FAQボットのツールを「作る」段階まで広がる
- ツール化しやすいのは、採用票の一覧化・評価の集計・規則にもとづく一次回答など、判断は人がするが集計・整理・応答の手間が大きい作業
- 困りごとを言葉にし、ダミーデータで作り、動かしながら自社の様式に合わせていく5日間の進め方で本番運用に届く
- 応募者・社員の個人情報は入力範囲を会社で定め、採否・評価・労務の判断は必ず人が行う
集計と応答の手間のツール化は、人事が人と組織に向き合う時間を取り戻す、効果の見えやすい一歩です。ツールに「そろえる手間」を任せ、人は判断と対話に集中する——それが、人事に無理のない生成AI活用の形です。
人事の集計・応答作業を自分たちで自動化したい方へ
AI CODEMY は、5日間で受講者が自分の業務課題を解決するツールを完成させる法人向け実践研修です。採用票の集計や評価の集計、労務FAQの一次回答など、人事の業務を題材にした研修も可能です。助成金の活用もあわせて、まずは無料相談でお気軽にご相談ください。
無料相談(30分)

