完成形のイメージ:選考の「今」と「次」が一目で分かる
今回作るのは、採用担当者の「状況把握」と「定型連絡」を代行する道具です。完成形は次のとおりです。
- 入力:応募者の一覧(求人媒体からのダウンロードや、いま使っている管理表)と、面接日程のやり取りのメモ
- 処理:選考フローのルールに沿って、応募者ごとの現在地と「次に誰が何をすべきか」を判定する
- 出力:選考ステータス管理表、面接日程の調整状況(打診済み・返事待ち・確定)、今日やるべきアクション一覧、そして書類選考通過や面接日程打診などの定型連絡メールの下書き
専用の採用管理システムを導入する方法ももちろんありますが、応募数や選考フローが自社特有で既製品が合わない、まずは手元の管理を楽にしたい、という段階なら、自分たちで作るほうが早く現実に合います。コードを書かずに業務アプリを内製する考え方は、プログラミング不要でアプリを作る方法で全体像を解説しています。
最初に確認:応募者の個人情報の扱い方
作り始める前に、必ず押さえておきたいのが個人情報の扱いです。応募者の氏名・連絡先・職歴は個人情報であり、選考に関する評価はとりわけ慎重に扱うべきデータです。次の4点を守ってください。
- 会社のルールを先に確認する:AIツールに業務データを渡してよい範囲は、会社のAI利用ガイドラインや個人情報の取扱規程に従います。判断に迷う場合は、情報管理の担当部署に確認してから始めます。
- 作る段階では架空データを使う:ツールの開発・試運転は、架空の応募者データ(ダミーの氏名・連絡先)で行えば十分です。実データは、ツールが完成して運用ルールを決めてから扱います。
- 学習に使われない設定・契約を確認する:法人でAIを使う場合は、入力したデータがAIの学習に利用されない設定やプランになっているかを確認します。
- 保存場所とアクセス権を限定する:生成される管理表や下書きの保存先は、採用担当者だけがアクセスできる場所に固定します。不採用者のデータをいつ消すかも、運用ルールとして先に決めておきます。
こうした扱いを最初に決めておけば、採用業務はAIでのツール化と相性の良い領域です。逆にここを曖昧にしたまま実データで作り始めるのは避けてください。
必要な準備:いまの管理表と選考フローを言葉にする
準備するものは3つです。
- いまの応募者管理表:Excelやスプレッドシートで管理している実物の形式(列の構成)。中身は前述のとおり架空データに置き換えたもので構いません。
- 選考フローの言語化メモ:「書類選考→一次面接→最終面接→内定」といった段階と、各段階で「誰が・何日以内に・何をするか」のルール。たとえば「書類選考の結果は3営業日以内に連絡」などです。
- 定型連絡の文面:日程打診、選考通過、お見送りなど、ふだん使っているメールのひな形。
研修の現場でこの題材を扱うと、「選考フローを言葉にする」段階で手が止まる方が一定数います。裏を返せば、ルールが担当者の頭の中にしかなかったということです。ここで書き出したメモは、ツールの設計図であると同時に、引き継ぎ資料としてもそのまま役立ちます。
作る手順:Claude Codeへの指示例つき
準備した3点を渡しながら、段階的に指示していきます。
ステップ1:ステータス管理表を作らせる
「『応募者』フォルダの一覧を読み込んで、選考ステータス管理表を作るツールを作って。選考段階は『書類選考→一次面接→最終面接→内定』の4段階。応募者ごとに、現在の段階、その段階に入った日、最終接触日、担当者の列を持たせて。段階の表記ゆれ(『一次』『1次面接』など)は統一して」
まずは「現状を1枚で見える化する」ところまで。ここが土台になります。
ステップ2:日程調整の状況と次のアクションを判定させる
「面接日程のやり取りメモを読み込んで、応募者ごとの調整状況を『未打診・打診済み・返事待ち・確定』で判定して管理表に追加して。さらに、選考フローのルール(書類選考の結果連絡は3営業日以内、返事待ちは1週間で再連絡など)と照らして、『今日やるべきアクション一覧』を期限の近い順に作って」
これで、毎朝の「誰に何をすべきか」の棚卸しが自動になります。期限のルールは自社の運用に合わせて言葉で渡すだけです。
ステップ3:定型連絡メールの下書きを作らせる
「ひな形フォルダのメール文面を使って、アクション一覧の各項目に対応する連絡メールの下書きを作って。宛名・面接日時・選考段階はその応募者の情報を差し込んで、件名つきで1人1ファイルに保存して。送信はせず、必ず下書きまでにして」
「送信はせず、下書きまで」が大切なルールです。応募者への連絡は会社の印象を左右するため、最終チェックと送信は必ず人が行う設計にします。
動かして直す:実際の選考1週間分で試す
ツールができたら、架空データで一通り動かしたあと、運用ルールに沿って実データで1週間並行運用してみます。いまの手作業の管理と並べて使い、ずれた箇所を言葉で直していきます。
「辞退の連絡があった人がアクション一覧に残り続けている。ステータスに『辞退』と『お見送り』を追加して、その人たちはアクション対象から外して」
採用は例外の多い業務です。選考の途中辞退、日程の再調整、ポジションの変更——例外が出るたびに「事実+どうしてほしいか」を伝えれば、ツールは自社の採用の現実に近づいていきます。最初から全例外を設計しようとせず、出てきた順に直すほうが結果的に速く仕上がります。
運用のコツ:更新は1か所、判断は人が行う
採用管理ツールを長く使うためのコツは3つです。
- 情報の更新先を1か所に決める:面接結果や応募者からの返信は、必ず元の応募者一覧(またはメモ)に書く。管理表やアクション一覧はそこから自動で作り直す、という一方通行にすると、情報の食い違いが起きません。
- 合否の判断と送信は人が行う:ツールが担うのは状況の整理と下書きまで。選考の評価・合否の判断・メールの送信は人の仕事として線を引きます。これは品質の問題であると同時に、応募者への誠実さの問題でもあります。
- データの削除ルールを運用に組み込む:選考終了者のデータをいつ・誰が消すかを決め、定期的に実行します。「終了から一定期間が過ぎた応募者のデータを一覧にして」と頼めば、削除対象の棚卸しもツールに任せられます。
採用以外にも、入社手続きや労務の定型業務など、人事まわりには同じ発想でツール化できる業務が多くあります。全体像は人事業務をClaude Codeで効率化する方法で、課題選びから完成までの基本の進め方はClaude Codeで業務ツールを作る5ステップでまとめています。
まとめ:状況整理はツールに、判断は人に
本記事の要点を整理します。
- 採用管理のAIツール化で自動になるのは、ステータス整理・日程調整の状況把握・次のアクション出し・定型連絡の下書き
- 着手前に個人情報の扱いを決める:会社ルールの確認、開発は架空データ、学習利用の確認、保存先と削除ルールの限定
- 準備は、いまの管理表・選考フローの言語化メモ・連絡メールのひな形の3つ
- 手順は「管理表→アクション判定→メール下書き」の3ステップで、送信は必ず人が行う
- 例外は出てきた順に言葉で直せば、自社の採用の現実に合っていく
応募者一人ひとりに向き合う時間は、状況把握の手作業を減らした分だけ増やせます。まずは架空データで、管理表の自動化から試してみてください。
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