問い合わせ対応を「内製」で解く理由
問い合わせ対応の効率化というと、まずチャットボットや問い合わせ管理SaaSの導入が思い浮かびます。もちろん有力な選択肢ですが、既製のサービスには「自社の商品や規約に合わせた回答を作り込むのが難しい」「毎月の利用料が積み上がる」「導入や設定に結局エンジニアの手が要る」といった壁があります。とくに、問い合わせの内容が自社独自で、FAQも社内の言い回しが色濃い場合ほど、汎用のサービスは実務にフィットしにくくなります。
ここで発想を変えて、対応を最もよく知っている担当者自身が、自社専用の小さなツールを作るという道があります。Claude Codeは、やりたいことを日本語で伝えると、プログラムの作成から実行までを対話で進めてくれるAIツールです。コードを一行も書かずに、日本語のやり取りだけで動くツールを組み立てられるため、これまでエンジニアがいないと作れなかった業務ツールを、非エンジニアが自分で内製できるようになります。Claude Codeそのものの概要はClaude Codeとは何かを解説した記事で詳しく扱っています。
内製で解く利点は三つあります。第一に、自社のFAQや過去の回答をそのまま材料にできるので、実務に合った回答が作れること。第二に、月額のかからない自前の道具になり、直したいところは自分で直せること。第三に、一度作れる担当者が生まれれば、次の困りごとも自分たちで解ける体質になることです。内製と外部サービスの使い分けは内製とSaaSを比べる記事で、現場が作り手になる考え方の全体像はAIの内製化を進める記事で整理しています。この記事は、問い合わせ対応に絞って作り方を掘り下げる位置づけです。汎用的なFAQボットの作り方は問い合わせボットを作る記事もあわせてご覧ください。
5日で作る問い合わせ対応ツールの全体像
5日間で目指すのは、大きな問い合わせ管理システムではなく、日々の対応の手間を確実に減らす小さなツールです。具体的には、次の三つの機能を持つ「回答支援ツール」を組み立てます。
一つ目は、回答ドラフトの自動生成です。お客様からの問い合わせ文を貼り付けると、自社のFAQと過去の回答例をもとに、そのまま送れる水準に近い返信の下書きを作ります。担当者はゼロから書くのではなく、下書きを確認して整えるだけで済むようにします。
二つ目は、FAQからの答え探しです。問い合わせの内容に近いFAQ項目を探し出し、「この質問にはこのFAQが該当します」と候補を示します。過去に答えたはずの内容を毎回探し回る手間をなくすのが狙いです。
三つ目は、対応履歴の整理です。受けた問い合わせと返した回答を、種類ごとに分類して一覧にまとめます。どんな質問が多いかが見えるようになり、FAQの追加や商品説明の改善にもつなげられます。日々の記録を集計して整える発想は日報ツールを作る記事と共通で、そちらの手順も参考になります。
いずれも「AIが勝手にお客様へ返信する」ものではなく、担当者の下書きと下調べを肩代わりして、最終確認と送信は人が担う形にするのがポイントです。この線引きが、問い合わせ対応にAIを使ううえで最も大切な設計になります。
5日間の作り方ステップ
ここからは、非エンジニアが実際にどう進めるかを、5日間の流れで具体的に示します。特別な環境は要らず、手元のパソコンとClaude Code、そして自社のFAQと過去の問い合わせ履歴があれば始められます。
1日目:材料をそろえて、やりたいことを言葉にする。まず、社内にあるFAQや商品説明、よくある質問への模範回答を一つのテキストにまとめます。過去の問い合わせと回答のやり取りも、数十件ほど手元に用意します。このとき、お客様の氏名・連絡先・注文番号といった個人が特定できる情報は、あらかじめ伏せ字にしておきます。準備ができたら、Claude Codeに「自社のFAQと過去の回答例をもとに、問い合わせ文から返信の下書きを作るツールを作りたい」と日本語で伝えます。
2日目:回答ドラフト生成を動かす。用意したFAQと回答例をClaude Codeに読み込ませ、試しに一件の問い合わせ文を渡して下書きを作らせます。最初の下書きは、言い回しが自社の雰囲気と違ったり、案内が足りなかったりします。そこで「もっと丁寧な敬語で」「返品の期限も必ず添えて」と日本語で直しの指示を重ね、自社の対応に寄せていきます。一度で完璧を狙わず、動かしながら直すのがコツです。
3日目:FAQからの答え探しを付け足す。問い合わせ文に近いFAQ項目を探して候補を示す機能を加えます。実際の過去の問い合わせを何件か流し込み、正しいFAQが候補に挙がるかを確かめます。外れる場合は、FAQの表現を整えたり、探し方の指示を調整したりして精度を上げます。ここまでで、下書き生成と答え探しがつながった形になります。
4日目:対応履歴の分類と、実データでの試運転。受けた問い合わせを種類ごとに分類し、一覧にまとめる機能を足します。そのうえで、直近の実際の問い合わせをまとめて処理してみて、下書きの質と分類の精度を通しで確認します。うまくいかない箇所は、FAQを補ったり指示を調整したりして仕上げます。実際のCSVやメールのエクスポートを使って通しで動かすことで、本番で使える状態に近づけます。
5日目:手順書にまとめて、チームで使えるようにする。できあがったツールの使い方を、自分以外の担当者でも使えるように短い手順書にまとめます。あわせて「どんな問い合わせには使わないか」「送信前に必ず人が確認する」といった運用ルールも書き添えます。ここまでで、5日間で自分の手を動かして作った、自社専用の問い合わせ対応ツールが完成します。カスタマーサポート部門でのより広い活用像はサポート部門のClaude Code活用記事で扱っています。
導入前後で何が変わるか
このツールが現場に入ると、対応の進み方が変わります。導入前は、問い合わせを受けるたびにゼロから文面を考え、過去の回答やFAQを自分で探し、担当者ごとに言い回しがばらつく、という状態でした。導入後は、下書きが自動で用意され、該当しそうなFAQも候補として示されるため、担当者は「確認して整える」ことに集中できます。回答の土台が共通化されるので、誰が対応しても案内の水準がそろいやすくなります。
削減できる時間やコストの数値は、問い合わせの量や内容、いまの対応体制によって大きく変わるため、本記事で具体的な数字を断定することはしません。ただ、考え方はシンプルです。まず、いま一件の対応に平均でどれくらいの時間がかかっているか、月に何件受けているかを洗い出します。次に、下書き生成と答え探しでそのうちどの工程が短縮できるかを見積もれば、削減の見当がつきます。自社の実データで測ることが、投資対効果を正しく捉える出発点です。内製でどれだけ費用を抑えられるかの試算の考え方は内製でコストを削減する記事で扱っています。
金額に表れにくい効果もあります。定型的な下書きから解放されることで、担当者は難しい案件や、お客様に寄り添った個別対応といった、人にしかできない仕事に時間を回せるようになります。問い合わせ対応の質そのものを底上げする方向に、余力を振り向けられるのです。
顧客情報の扱いと線引き
問い合わせ対応のツールを作るうえで、最も慎重に考えるべきなのが顧客情報の扱いです。問い合わせには、氏名・連絡先・注文内容・支払い状況など、社外に出してはいけない個人情報が含まれます。便利さを優先してこうした情報をそのままAIに入力してしまうと、情報漏えいの事故につながりかねません。
基本の線引きは、個人が特定できる情報は入力前に伏せる、というものです。氏名や連絡先、注文番号などは、ツールに渡す前に伏せ字や仮の値に置き換えます。回答の下書きを作るのに必要なのは「どんな内容の問い合わせか」であって、「誰からの問い合わせか」ではないことがほとんどです。何を入力してよいか・いけないかは担当者任せにせず、会社としてルールを定めておくべきです。生成AIに入れてはいけない情報の考え方は入力してはいけない情報リストの記事にまとめています。
もう一つの線引きは、AIの出力をそのままお客様へ送らないことです。下書きはあくまで素材であり、内容が正しいか、案内に漏れや誤りがないかを人が必ず確認してから送信します。とくに料金・納期・契約に関わる案内は、機械の出力を鵜呑みにせず、人が裏取りする運用を徹底します。この「人が最終確認する」前提を崩さないことが、問い合わせ対応にAIを安全に組み込むための土台になります。
研修・助成金で始める
「非エンジニアが自分でツールを作る」と言っても、最初のきっかけは独学だけでは作りにくいものです。AI CODEMYは、5日間で受講者が自分の業務課題を解決するツールを完成させる法人向け実践研修で、問い合わせ対応のような部門ごとの題材に合わせて実施できます。この記事で示した5日間の流れを、講師の伴走のもとで自分の手を動かしながら進められます。
費用面では、人材育成や業務改善を対象とした国の助成金を活用できる場合があります。どの制度がいくらの助成率で使えるかは、対象の要件や年度によって変わるため、厚生労働省などの公表資料を要確認です。AI CODEMYでは活用しやすい制度の整理から相談に乗っています。概要はAI研修に使える助成金の解説にまとめているので、まずはこちらをご覧ください。
まとめ:問い合わせ対応こそ現場が作り手になれる領域
本記事の要点を整理します。
- 問い合わせ対応は定型的だが手間が大きく、自社独自の内容が多いため、既製サービスより現場が作る内製が合いやすい
- Claude Codeを使えば、非エンジニアが5日で回答ドラフト生成・FAQからの答え探し・対応履歴の整理を持つツールを内製できる
- 1日目に材料をそろえ、2〜4日目で動かしながら直し、5日目に手順書と運用ルールにまとめる流れで進める
- 導入効果は自社の実データ(対応時間・件数)で測り、余力を人にしかできない対応へ振り向ける
- 顧客の個人情報は入力前に伏せ、AIの下書きは人が確認してから送信する線引きを徹底する
問い合わせ対応は、自社のFAQと過去のやり取りという「作る材料」がすでに手元にそろっている、内製に最も向いた領域の一つです。外注に頼らず、対応をいちばんよく知る担当者自身が小さなツールを作る——その一歩が、対応の質と現場の余力を同時に高める入口になります。
問い合わせ対応ツールを自社で内製してみたい方へ
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