財務・FP&Aの生成AI活用ハンズオン|月次予実管理と資金繰り表とKPIダッシュボードを自分で内製

財務・FP&A担当が月次予実管理・資金繰り表・KPIダッシュボードのツールを内製するイメージイラスト

会計ソフトから試算表を書き出して、予算のシートと突き合わせ、差異のある勘定科目を色付けする。入金予定と支払予定を別々の表から拾い集めて、月末に残高がいくらになるかを電卓で追う。各部門から集めた数字を、経営会議用の一枚に組み直す——財務・FP&Aの現場は、数字の意味を読み解いて次の一手を考える本来の仕事と同じくらい、数字を「集めて・そろえて・並べ替える」作業に時間を取られています。生成AIというと文章を書かせるチャットの使い方が思い浮かびがちですが、本記事が扱うのはその先です。こうした定型の集計・作成の手間を、財務・FP&Aの担当者自身が小さなツールにしてしまう——プログラミング経験のない人が、です。本記事では、財務・FP&Aのどんな業務をツール化できるのかを整理したうえで、非エンジニアが5日間で本番運用のツールを内製する具体的な進め方と、情報の取り扱いの注意点を解説します。

現場の困りごとをそのままツールにして、月次予実管理・資金繰り表・KPIダッシュボードの3領域へ展開する
図:現場の困りごとをそのままツールにして、月次予実管理・資金繰り表・KPIダッシュボードの3領域へ展開する

なぜ財務・FP&Aこそ「使う」より「作る」なのか

財務・FP&Aの現場で生成AIを使う、と聞いてまず思い浮かぶのは、チャットに月次報告のコメントや、会議資料の説明文の下書きをつくってもらう使い方でしょう。それも有用ですが、毎回チャットに貼り付けて、出てきた結果を手でシートや資料に戻して——という手間が残り、予実の突き合わせや資金繰りの計算そのものは手作業のまま変わりません。

本記事の主語は「使う」ではなく「作る」です。試算表と予算を決まった様式で突き合わせて差異を洗い出す、入金予定と支払予定から月末残高の見通しを組み立てる、各部門の数字を経営会議用の一枚にまとめる、といった決まった作業を、毎回手で頼むのではなく現場の小さなツールにしてしまう。すると、その作業は決まった操作ひとつで終わるようになります。財務・FP&Aの業務は「経営への示唆や次の打ち手の判断は人が担うが、その手前の集計・作表・整形の手間が大きい」という構造をしているため、判断はそのまま人が担い、手間だけをツールに寄せる余地が特に大きいのです。

ここで鍵になるのがClaude Codeです。Claude Codeは、やりたいことを日本語で伝えると、プログラムの作成から実行までを対話で進めてくれるAIで、コードを一行も書かなくても、対話だけで動くツールを組み立てられます。だからこそ、自社の予算様式や勘定科目の並び、資金繰りの見方をいちばん分かっている担当者自身が作り手になれます。外注してシステムに仕様を伝えるより、現場の言葉でそのまま作るほうが、自社の予実管理や資金繰り表の形に合った道具ができあがります。会社としてツールを内製する考え方の全体像はAIの内製化を進める記事で、内製と外部サービスの使い分けは内製とSaaSを比べる記事でも扱っているので、本記事の「作り方ハンズオン」とあわせてご覧ください。

ツール化しやすい財務・FP&Aの業務

財務・FP&Aの現場で、非エンジニアがツール化しやすい業務には次のようなものがあります。いずれも「判断は人がするが、集計・作表・整形の手間が大きい」作業です。

  • 月次予実管理:会計ソフトから書き出した実績と予算のシートを突き合わせ、勘定科目ごとの差異と差異率を並べた予実表にまとめる。差異の原因を読み解き対策を決める判断は担当者が行い、機械は突き合わせと作表の手間を担います。
  • 資金繰り表の作成:入金予定と支払予定を拾って、月ごとの収支と月末残高の見通しを組み立てる。前提の置き方や資金手当ての判断は人が行い、機械は数字の集計と表への流し込みに使います。
  • KPIダッシュボードの更新:売上・粗利・営業利益・資金といった経営指標を、決まったフォーマットの一枚に毎月そろえ直す。数字が何を意味するかの解釈は人が引き取り、機械は集計と整形を担います。
  • 経営会議用の数字まとめ:各部門から集まった数字を、会議で使う様式に並べ替えて要約の下ごしらえをする。メッセージの組み立ては人が行い、機械は転記と整形の手間を減らします。

共通するのは、「様式や項目は決まっているのに、毎月そろえ直す・突き合わせる・組み直す手間がかかる」点です。こうした定型作業はClaude Codeでの自動化がよく効く領域です。毎月の集計を自動で更新するダッシュボードそのものはKPIダッシュボードを内製する手順で、会計まわりの集計の内製は経理の仕訳チェックツールを自作する手順で詳しく解説しています。

5日で内製する進め方

「財務・FP&A担当がツールを作る」と言われても、想像しづらいかもしれません。実際の進め方は、おおむね次の5日間の流れになります。これはAI CODEMYの研修で受講者が自分の業務ツールを完成させるときの組み立て方そのものです。

1日目:自分の困りごとを言葉にする。「どの集計や作表に、毎月何時間とられているか」を棚卸しし、ツールにしたい1本を決めます。たとえば「月次で会計ソフトの実績を書き出すたびに、予算シートと勘定科目を突き合わせて差異表を作り直すのに時間がかかる」。ここで問われるのはプログラミングの知識ではなく、自分の業務を言葉にする力です。

2日目:ダミーデータを用意して、たたき台を作る。本物の金額や取引の数字はそのまま使わず、まずは差し替えたダミーの試算表と予算表を用意します。そのうえでClaude Codeに作りたいものを伝え、最初の動くたたき台を出させます。一度で完璧を狙わず、動かしながら直す前提です。

3日目:自社の様式に合わせて直す。ダミーで動かし、「この勘定科目の並びに合わせて」「差異率も列に足して」「資金繰り表は月ごとに横並びにして」と日本語で調整します。やり取りを繰り返して、自分の会社の予算様式や資金繰りの見方にツールを寄せていきます。

4日目:同僚に見てもらい、運用の形を決める。同じ業務をするチームや経理の同僚に試してもらい、誰がいつ使うか、出力をどこに保存するかといった運用の段取りを固めます。予実表や資金繰り表を人がどう確認してから会議に出すかも、ここで決めます。

5日目:ルールを確認して、本番運用へ。実データを扱う前に、会社の情報の取り扱いルール(未公表の業績や資金の数字など、クラウドに何を送ってよいか)を必ず確認し、扱う範囲を決めたうえで日々の業務に組み込みます。非エンジニアが最初の1本を組み立てる全体の進め方はClaude Codeで業務ツールを作る5ステップで詳しく解説しています。

指示の具体例

2日目にClaude Codeへ出す指示は、たとえば次のようなものです。月次予実管理ツールを想定しています。

「このフォルダにある実績の試算表と予算表(いずれもダミー)を読み込んで、勘定科目ごとに『予算・実績・差異・差異率』を並べた予実表にまとめてほしい。並び順は予算表の勘定科目の順に合わせて。試算表と予算表で科目名が一致しないものは、勝手に対応づけず別欄に出して知らせて。差異の原因が良い・悪いといった評価は書かず、計算した数字を転記するだけにして」

このように、「何を読み取り」「どんな形に整え」「やってはいけないこと(科目を勝手に対応づけない・評価を書かない)」まで具体的に書くのがコツです。あいまいな指示ほど結果がぶれます。逆に、ここを丁寧に言葉にできれば、自社の予算様式や集計の作法をそのままツールに落とし込めます。特に財務・FP&Aでは「元の数字にない値を補完しない」「良し悪しの判断はツールに書かせず人に返す」という指示が重要で、AIが差異の理由を勝手に推測したり数字を丸めたりすると、経営判断の前提が崩れるため、補完と断定を禁じる一文を必ず添えます。指示の組み立て方そのものは業務で使えるプロンプトの書き方が参考になります。

情報の取り扱いの注意点

財務・FP&Aでツールを使ううえで、丁寧に押さえたい注意点があります。扱うのが会社の根幹の数字である以上、便利さより先に線引きを決めるのが出発点です。

第一に、未公表の業績や資金の数字はそのままクラウドに送らない。月次の実績、来期の予算、資金繰りの見通しといった数字は、社外に出ると不利益になりうる情報です。ツールを作る段階ではダミーデータだけを使い、本番でも何をクラウドのAIに送ってよいかは必ず会社のルールに従います。判断に迷う情報は入力しないのが安全です。AIに入れてはいけない情報の具体的な考え方は生成AIに入力してはいけない情報リストにまとめています。

第二に、数字の解釈と経営判断はツールに任せない。差異が何を意味するか、資金をどう手当てするか、どこに投資するかは、財務・FP&Aが責任を負って行うもので、AIが置き換えるものではありません。ツールにできるのは予実を突き合わせて差異表にそろえる、入出金から残高見通しを組み立てる、指標を一枚に整えるまでで、その先の解釈・提言・意思決定は必ず人が行います。ツールが出した予実表や資金繰り表はあくまで下書きであり、金額が正しいか、様式や事実と合っているかの最終確認は担当者が行う前提で運用します。特に経営会議に出す数字に機械の推測を持ち込むと、誤った前提が意思決定に直結するため、判断は人に返す設計を徹底します。

第三に、情報漏えいを起こさない仕組みを先に決める。「どのツールに何を入力してよいか」を担当者任せにすると、思わぬ持ち出しが起こりえます。入力してよい情報の範囲や、使ってよいツールをあらかじめ会社で定めておく必要があります。組織として情報漏えいを防ぐ進め方は生成AIの情報漏えいを防ぐ記事で詳しく解説しています。会社の数字をまとめて扱う財務・FP&Aだからこそ、便利さより先に「入れてよい情報の線引き」を決めておきます。

研修・助成金で始める

「会社がツールを内製する」と言っても、最初のきっかけは独学では作りにくいものです。AI CODEMYは、5日間で受講者が自分の業務課題を解決するツールを完成させる法人向け実践研修で、財務・FP&Aのように特定の集計・作表業務を題材にした研修も可能です。会計まわりの内製の広げ方を知りたい方は経理のClaude Code活用もあわせてご覧ください。内製でどれだけ費用を抑えられるかの考え方は内製でコストを削減する記事で扱っています。

費用面では、人材育成や業務改善を対象とした国の助成金を活用できる場合があります。どの制度がいくらの助成率で使えるかは、対象の要件や年度によって変わるため、厚生労働省などの公表資料を要確認です。AI CODEMYでは活用しやすい制度の整理から相談に乗っています。AI研修に使える助成金の解説に概要をまとめているので、まずはこちらをご覧ください。

まとめ:集める・そろえる・組み直す手間を自社の道具に変える

本記事の要点を整理します。

  • 財務・FP&Aの生成AI活用は「使う」だけでなく、担当者自身が月次予実管理・資金繰り表・KPIダッシュボードのツールを「作る」段階まで広がる
  • ツール化しやすいのは、予実の突き合わせ・資金繰り表の作成・KPIの更新など、判断は人がするが集計・作表・整形の手間が大きい作業
  • 困りごとを言葉にし、ダミーデータで作り、動かしながら自社の様式に合わせていく5日間の進め方で本番運用に届く
  • 未公表の数字は入力範囲を会社で定め、数字の解釈と経営判断は必ず人が行う

集計と作表の手間のツール化は、財務・FP&Aが数字の意味を読み解き次の一手を考える時間を取り戻す、効果の見えやすい一歩です。ツールに「そろえる手間」を任せ、人は解釈と提言に集中する——それが、財務・FP&Aに無理のない生成AI活用の形です。

財務・FP&Aの集計・作表作業を自分たちで自動化したい方へ

AI CODEMY は、5日間で受講者が自分の業務課題を解決するツールを完成させる法人向け実践研修です。月次予実管理や資金繰り表の作成、KPIダッシュボードの更新など、財務・FP&Aの業務を題材にした研修も可能です。助成金の活用もあわせて、まずは無料相談でお気軽にご相談ください。

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執筆:AI CODEMY 編集部 / 最終更新:2026年7月7日