なぜメール翻訳・要約を内製するのか
海外とのメールのやり取りは、翻訳そのものより「読んで要点を掴み、次の一手を決める」ところに時間がかかります。担当者は次のような困りごとを抱えがちです。
- 長い英文メールを訳しても、依頼事項や期限がどこにあるのか掴みにくい
- 一通ずつ翻訳サイトに貼り付ける手間がかかり、本数が増えると追いつかない
- 担当者しか読めず、不在時に社内で内容が共有できず対応が止まる
- 訳語が人によってばらつき、同じ製品名や条件が違う言葉で伝わる
この作業は「決まった観点で、届いた文面から必要な情報を取り出す」性質が強く、ツール化と相性の良い領域です。汎用の翻訳サービスもありますが、自社で使う製品名や取引条件の訳し方をそろえにくかったり、社外秘を含むメールを外部サービスに貼ることに抵抗があったりします。自社の用語と観点どおりに、手元でメールを整理できるのが内製の強みです。定型作業を見極めて自動化する考え方は繰り返し作業を自動化する進め方でも整理しています。取引先とのやり取り全般の効率化は購買・調達業務をClaude Codeで内製する手順もあわせてご覧ください。
作るツールの全体像
今回作るのは、海外取引先から届いたメールの本文を受け取り、日本語訳と要点のまとめを書き出す小さなツールです。流れは次のとおりです。
- 入力:メール本文のテキストを渡す(件名や差出人も一緒に渡すと精度が上がります)
- 翻訳:本文を自然な日本語に訳す(自社の用語集にそって製品名や条件の表記をそろえる)
- 要約:「依頼事項」「期限」「金額や数量」「先方の確認待ち事項」など、決めた観点で要点を抜き出す
- 出力:日本語訳・要点のまとめ・必要なら返信のたたき台を、見やすい形で書き出す
大切なのは、「メールから何を取り出したいか」という観点を最初に決めておくことです。たとえば「依頼された作業」「対応期限」「金額・数量・型番」「こちらが返答すべき点」といった項目をまとめておけば、誰が使っても同じ形で整理されます。最初は翻訳と箇条書きの要約だけを対象にして動かし、慣れてから返信ドラフトの作成を足していくと無理なく進められます。問い合わせ対応の自動化に発展させる視点は問い合わせ対応ツールを内製する手順も参考になります。
用意するもの
準備するのは次の3つだけです。特別な開発環境は必要ありません。
- Claude Code:指示を出すと、必要なファイルを自動で作ってくれます。導入手順はClaude Codeのはじめ方を参照してください。
- 実際のメール文面:普段やり取りしている海外取引先のメールを数通用意します。まずは社外秘の度合いが低いものから試すと安全です。
- 用語集と観点メモ:「この製品名はこう訳す」「取り出したい項目は依頼・期限・金額・要返答の4つ」など、訳し方と要約の観点を書き出しておくと、Claude Code に意図が正確に伝わります。
メール本文には取引条件や個人情報が含まれるため、扱いには注意が必要です。試す段階でも社内の管理ルールに沿って保管し、社外秘の内容を扱う際は取り扱い可能な環境かを事前に確認してください。業務でAIを安全に使う考え方は業務AI利用時の情報漏えい対策で解説しています。
Claude Codeへの指示と作成手順
ここからは、実際にClaude Code へ出す指示の流れを順番に見ていきます。専門用語は使わず、ふだんの言葉で頼むのがコツです。
第一段階:やりたいことと出力の形を伝える。「海外取引先の英語メールを渡すと、日本語訳と要点のまとめを作りたい」と目的を伝え、実際のメール文面を渡します。訳文のあとに「依頼・期限・金額・要返答」の順で箇条書きを付けてほしい、といった出力の形も一緒に伝えると、Claude Code が土台のファイルを作ってくれます。
第二段階:翻訳の質と用語をそろえる。まず訳文を確認し、「この製品名は原語のまま残して」「この条件はこう訳して」と用語集にそって調整します。堅すぎる・くだけすぎる場合は「取引先へのビジネスメールとして自然な丁寧さで」と伝えます。実例で良し悪しを示すと、狙いがぐっと伝わりやすくなります。
第三段階:要点の抜き出しを整える。翻訳が整ったら、「期限にあたる日付は必ず抜き出して」「金額や数量、型番は原文どおり正確に写して」と、あらかじめ決めた観点を渡します。文中に見当たらない項目は空欄のまま無理に埋めず、「記載なし」と示してほしいと頼んでおくと、事実の取り違えを防げます。
第四段階:返信のたたき台まで広げる。要点が安定したら、「先方への返信の下書きも日本語と英語で作りたい」といった要望も言葉で伝えれば調整できます。下書きはあくまで案とし、送る前に必ず人が内容を確認する運用にしておきます。完成したら、操作の流れをメモに残しておくと、次回からはメール文面を差し替えるだけで翻訳と要約が回ります。
つまずきやすい点と回避策
はじめて内製する方が引っかかりやすいポイントを、先回りしてお伝えします。
数値や期限を訳の勢いで変えてしまうこと。金額・数量・型番・日付は、翻訳の流れで言い換えると事実がずれます。これらは「原文どおり正確に写す」よう指示し、要点の一覧にも原文の表記を残しておくと安全です。重要な数字は人が原文と突き合わせて確認してください。
見当たらない情報を埋めてしまうこと。「期限」の欄を埋めようとして、文中にない日付を推測で入れてしまうと危険です。記載がない項目は「記載なし」と示す設計にし、無理に補わせないようにしましょう。曖昧な箇所は先方に確認する、という前提で使うのが安全です。
社外秘のメールを無防備に扱うこと。取引条件や見積を含むメールは機密性が高く、扱う環境を選びます。試す段階では機密度の低い文面から始め、社外秘を扱う際は取り扱い可能な環境かを必ず確認してください。こうして手順を一度固めておけば、あとはメールを差し替えるだけで使い回せるのが内製の利点です。Excel中心の整理とあわせて進めたい場合はExcelをAIで自動化する方法も参考になります。
まとめ:訳語と観点は人が決め、翻訳と要約はツールに
本記事の要点を整理します。
- 海外メールの翻訳は、要点を掴み次の一手を決める部分に時間がかかる業務課題
- 作るのは「メール本文の入力→翻訳→要点の抜き出し→出力」の小さなツール
- 用意するのはClaude Code・実際のメール文面・用語集と観点メモの3つだけ
- 金額や期限は原文どおり写し、見当たらない項目は「記載なし」と示す
- 返信の下書きは案として扱い、送る前に必ず人が確認する
訳語と取り出す観点は人が決め、翻訳と要点のまとめという手間はツールに任せる——この役割分担を押さえれば、海外とのやり取りの負担は大きく軽くなります。まずは手元の海外取引先メールを一通、Claude Code に渡すところから始めてみてください。
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