なぜイベント後のフォローを内製で持つのか
展示会やセミナーの参加者情報は、一か所からまとめて届くことがありません。申込はフォームのCSVで、来場の有無は受付の記録で、実際に話した相手は名刺で、興味の度合いはアンケート用紙で手に入ります。それぞれ形式も項目も違い、同じ人が複数の記録にまたがって現れます。この状態のまま数日が過ぎると、次のようなことが起きます。
- 宛先の一覧が作れないので、お礼の連絡そのものが後ろへずれていく
- 申込だけして来なかった人と、ブースで長く話した人が同じ扱いで並ぶ
- 同じ会社の複数の担当者に、別々の人から重複して連絡が行く
- 名刺を持ち帰った本人しか状況を知らず、その人が出張に出ると止まる
- 次回の出展を検討するときに、前回何件フォローできたのかを誰も答えられない
ここで扱っているのは「別々の形式の名簿を一本にまとめ、まだ連絡していない人を抜き出す」という、突き合わせが中心の処理です。判断らしい判断はほとんど含まれていません。それでも進まないのは、まとめる作業が手作業だと半日仕事になり、その半日が取れないまま鮮度が落ちていくからです。一方で「この会社は既存の取引先なので担当営業から連絡する」「名刺交換はしたが競合他社なので送らない」といった仕分けは、事情を知っている人にしかできません。営業支援のサービスにも同種の機能はありますが、全社で導入して項目を揃えるには時間がかかります。まずは自分たちが出た一つのイベントの分だけを漏らさない小さな仕組みを先に作れるのが内製の強みです。集めた名刺そのものの整理は名刺管理ツールの作り方とあわせて設計すると、集めた側と連絡する側が一本の線でつながります。
作るツールの全体像
今回作るのは、イベントが終わったあとに「まだ連絡していない人」だけを、優先順位のついた形で並べてくれる小さなツールです。流れは次のとおりです。
- 参加者記録の作成:会社名・氏名・イベント名・接点の種類の4項目を、一人一行で残す
- 出所の違う名簿の取り込み:申込データ、来場記録、名刺、アンケートを同じ一覧に足していく
- 重複候補の抽出:同じ人の可能性がある組を並べ、まとめるかどうかは人が決める
- フォロー対象の抜き出し:未連絡・連絡済み・返信ありの三つに分けて出す
- 連絡結果の記録:送った日と、返事が来た日を分けて残す
この設計でいちばん大事なのは、接点の種類を必ず持たせることです。申込だけの人、来場した人、ブースで会話した人、資料請求をした人——同じ「参加者」でも、こちらとの距離はまったく違います。この一列がないと、全員が同じ重みで並び、結果として全員に同じ文面を送るか、誰にも送らないかの二択になります。逆にこの列さえあれば、会話した人から順に連絡するという当たり前の優先順位が、その日のうちにつけられます。項目を4つに絞るのも意図的です。役職、部署、電話番号、興味のある製品、当日の会話メモと足したくなりますが、増えるほど一行を埋めるのが面倒になり、埋まらない台帳は使われません。連絡先そのものは名刺やCSVの側に残っているので、一覧が持つべきなのは「誰に、どこで会って、次に何をするか」だけです。このツールが引き受けるのは、連絡すべき相手の抜き出しまでです。商談に入ったあとの追いかけは営業フォローリマインダーの作り方、顧客名簿そのものの整備は顧客リスト整理ツールの作り方と役割を分けておくと、どれも軽いまま続きます。
用意するもの
準備するのは次の3つだけです。特別な開発環境は必要ありません。
- Claude Code:指示を出すと、必要なファイルを自動で作ってくれます。導入手順はClaude Codeのはじめ方を参照してください。
- 直近のイベントの名簿一式:申込フォームのCSV、当日の受付記録、持ち帰った名刺の情報、アンケート用紙。形式はばらばらのままで構いません。
- そのときのフォローの記録(覚えている範囲で):誰に連絡したか、どこで止まったかを思い出しながら並べると、抜けていた列が見つかります。
名簿を用意するときは、きれいに整えてから渡そうとしないでください。列の並びが違う、表記が全角と半角で混ざっている、同じ会社が「株式会社」と「(株)」で書かれている——そうしたばらつきは、そのまま渡して構いません。整える作業こそ、これから作るツールに任せる部分だからです。むしろ大事なのは、出所の異なる名簿を必ず二つ以上そろえることです。一つだけだと突き合わせが発生せず、本番で起きる問題が見えないまま完成してしまいます。あわせて、氏名や会社名といった個人情報を扱うので、どこまでの情報をAIに渡してよいかは業務AI利用時の情報漏えい対策を確認し、先に上長と決めてから進めてください。アンケートの回答そのものを集計したい場合はアンケート集計ツールの作り方が参考になります。
Claude Codeへの指示と作成手順
ここからは、実際にClaude Code へ出す指示の流れを順番に見ていきます。専門用語は使わず、ふだんの言葉で頼むのがコツです。
第一段階:形式の違う名簿を、そのまま渡して一本にまとめさせる。「展示会でもらった名刺の情報と、申込フォームのCSVと、当日の受付記録がばらばらにある。これを一人一行の参加者リストにまとめてほしい」と目的を伝え、手元のファイルをそのまま渡します。ここで列の対応づけを自分で説明しようとしないでください。「この列が会社名で、こちらのファイルでは社名という見出しになっていて」と細かく指示するより、まず渡して「どう対応づけたかを一覧で見せてほしい」と頼むほうが早く進みます。対応づけの結果を見れば、間違っているところだけを直せば済みます。項目は会社名・氏名・イベント名・接点の種類の4つに絞ってください。表記のばらつきも「株式会社と(株)は同じものとして扱ってほしい」と一言添えれば揃います。
第二段階:接点の種類を、記録の出所から自動でつけさせる。「どのファイルから来たかによって、申込のみ・来場・会話あり・資料請求のどれかを付けてほしい」と伝えます。この列を人が手で埋めようとすると、数百件のイベントでは埋まりません。しかし出所そのものが情報を持っています。申込CSVにしかいない人は申込のみ、受付記録にいれば来場、名刺があれば会話あり、というように、どのファイルに現れたかで機械的に決められます。あわせて「複数の出所に出てくる人は、いちばん濃い接点を採用してほしい」と伝えてください。名刺もあり申込もある人は、会話ありとして扱うのが自然です。マーケティング側でイベント全体をどう回すかはマーケティング業務でのClaude Code活用もあわせてご覧ください。
第三段階:重複は「候補」として出させ、確定はさせない。「同じ人の可能性がある組を並べてほしい。ただし勝手にまとめないで、判断できるように並べて見せてほしい」と伝えます。ここが本記事でいちばん大事なところです。同姓同名の別人なのか、旧姓と現姓なのか、同じ会社の親子会社なのか——機械には確定できない組が必ず残ります。それでも自動でまとめさせると、別人が一人に統合されて片方への連絡が消えます。逆に、まとめる作業を人が全件やろうとすると、そこで手が止まります。候補として並べ、目で見て決める形にすれば、判断が必要な数十件だけに時間を使えます。あわせて「同じ会社に複数の人がいる場合は、まとめずに会社名でグループにして見せてほしい」と伝えておくと、社内の誰が連絡するかを決めやすくなります。
第四段階:未連絡・連絡済み・返信ありの三つに分け、送信日と返信日を別に持たせる。「まだ連絡していない人、送ったが返事がない人、返事が来た人の三つに分けて出してほしい。送った日と返事が来た日は別々に残せるようにしてほしい」と伝えます。三つに分ける理由は、次にやることが違うからです。未連絡は文面を用意して送る仕事、連絡済みは頃合いを見て再度声をかける仕事、返信ありは商談として引き継ぐ仕事です。ひとまとめにすると、どこまで進んだ人なのかが分からないまま一覧が残ります。送信日と返信日を分けるのも同じ理由で、送った時点で一覧から消してしまうと、返事がないまま忘れられる人が生まれます。あわせて「イベントから何日経ったかを出して、接点の濃い人を先頭にしてほしい」と伝えてください。作ったあとに何を自動化していくかの考え方はClaude Codeで業務ツールを作る5ステップ、日々の繰り返し作業へ広げる進め方は定型業務をAIで自動化する進め方が参考になります。
つまずきやすい点と回避策
はじめて内製する方が引っかかりやすいポイントを、先回りしてお伝えします。
重複をきれいに消し切ろうとして、名寄せに時間を溶かすこと。これが最も多い失敗です。一本にまとまった一覧を眺めていると、同じ会社が二通りの書き方で並んでいたり、似た名前の人が二行あったりするのが気になり始めます。そこから「完全に整った名簿」を目指すと、判断のつかない組が次々に出てきて、いつまでも連絡が始まりません。しかし目的はフォローであって、名簿の完成ではありません。しかも害の大きさは対称ではないのです。同じ会社の二人に別々の連絡が行くのは、少し気まずい程度で済みます。一方、統合しすぎて消えた人には連絡そのものが行かず、消えたこと自体が誰にも見えません。迷ったらまとめない、を基本にしてください。重複候補は一覧に残しておき、連絡を出したあとで落ち着いて整理すれば十分です。
名簿が整うのを待ってから連絡を始めること。二番目に多い失敗です。イベント後のフォローは、日が経つほど相手の記憶が薄れます。「あの展示会でお話しした」と書いても、二週間経てば相手にとっては何十社のうちの一社です。ところが台帳を作り始めると、全件そろえてから一斉に送りたくなります。そうではなく、接点の濃い人から先に出して、その日のうちに送ってください。会話ありの数十人に先に連絡し、申込のみの数百人はその翌週でも構いません。ツールを作る目的は、待つ理由を減らすことです。全件が整うまで待つ運用にしてしまうと、手作業でやっていたときと同じ場所で止まります。長く使い続けるための見直しの進め方は内製ツールの保守の進め方で解説しています。
ツールに文面の作成と送信までやらせようとすること。三番目に注意したい点です。宛先の一覧が出てくると、次はメールの作成と一斉送信まで任せたくなります。しかし社外へ出る連絡は、送ってしまえば取り消せません。既存の取引先が混ざっていた、競合他社の担当者が名刺交換に来ていた、当日クレームに近い話をされた相手だった——一覧の上では区別がつかない事情が必ず混ざります。誰に送るかの最終判断と、文面の確認は人が持ってください。ツールが引き受けるのは、連絡すべき相手を抜き出して並べるところまでです。文面の下書き自体をAIに手伝わせたい場合は、送信は別に分けたうえでメール返信下書きツールの作り方の考え方が使えます。営業側での使いどころ全体は営業部門でのClaude Code活用もあわせてご覧ください。
まとめ:まとめる作業はツールに、誰に送るかの判断は人に
本記事の要点を整理します。
- イベント後のフォローが止まるのは段取りの問題ではなく、参加者情報が最初から別々の場所に生まれること
- 作るのは「参加者記録の作成→出所の違う名簿の取り込み→重複候補の抽出→フォロー対象の抜き出し→連絡結果の記録」の小さなツール
- 用意するのはClaude Code・直近のイベントの名簿一式・そのときのフォローの記録の3つだけ。名簿は整えずそのまま渡す
- 接点の種類の一列が優先順位のすべて。どのファイルに現れたかで機械的に決められる
- いちばん効くのは、重複を機械に確定させず候補として並べること。まとめすぎて消えた人は誰にも見えない
- 誰に送るかの判断と文面の確認は人が持ち、ツールは対象の抜き出しまで
名簿が完璧に整うのを待たない——この一点を決めるだけで、イベント後のフォローは「気力が残っていればやる作業」から「濃い順に上から消していく作業」へ変わります。まずは直近のイベントの名簿を二種類だけClaude Code に渡し、会話ありの人の一覧を出すところまでを試してみてください。研修費用の負担を抑えながら社内に内製できる人を増やす方法は生成AI研修に使える助成金もご確認ください。
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