なぜクレーム対応の記録を内製するのか
クレーム対応で問題が起きるのは、担当者の熱意が足りないからではありません。受け付ける入口が分かれているのに、その後を束ねて見る場所がないからです。現場では次のような困りごとが起きがちです。
- 電話で受けた苦情が担当者のメモにしか残らず、その人が休むと経緯が誰にも分からない
- 折り返しの約束が口頭のままになり、期限を過ぎてからお客様の再連絡で気づく
- 同じ原因の苦情が別々の担当者に届いていて、社内では繰り返しだと認識されない
- 上長への報告が個別のメールで飛ぶため、いま全体で何件抱えているのかが分からない
この作業は「受け付けたものを漏れなく追いかけ、期限を過ぎたものを見つける」性質が強く、機械的な突き合わせと相性の良い領域です。既製の顧客管理システムや問い合わせ管理サービスにも同様の機能はありますが、営業支援やチャネル連携まで含む大きな仕組みで、月額の費用や初期設定の負担が、月に数件から数十件という規模には見合わないこともあります。結局は現場が手元の表で別に管理し、二重管理になってしまう話も珍しくありません。自社が実際に受けている内容だけへ絞った身軽な仕組みを作れるのが内製の強みです。定型作業を見極めて自動化する考え方は繰り返し作業を自動化する進め方でも整理しています。顧客対応の業務全体でClaude Codeをどう使うかはカスタマーサポート業務をClaude Codeで効率化する進め方とあわせてご覧ください。
作るツールの全体像
今回作るのは、受け付けたクレームを一か所に集め、止まっているものを機械的に見つけ、繰り返し起きている内容を浮かび上がらせる小さなツールです。流れは次のとおりです。
- 受付の記録:受付日・お客様や取引先・内容の区分・対応状況を控え、一件として記録する
- 期限の設定:「初回の折り返しはいつまで」「最終回答はいつまで」といった社内で決めた目安から、対応の期限を自動で置く
- 未完了の抜き出し:期限が近いもの・過ぎたもの・担当者が決まっていないものを抜き出す
- 担当者ごとの一覧:誰がいま何件抱えているかを、担当者ごとにまとめて見られるようにする
- 繰り返しの洗い出し:同じ区分や似た内容が一定期間にどれだけ起きているかを集計する
大切なのは、最初から細かく分類しないことです。原因の分類や重大度の判定基準まで一度に作り込もうとすると、記録の手間が増えて現場が入力しなくなります。まずは受付日・お客様や取引先・内容の区分・対応状況の四つだけで動かし、区分も「商品の不具合」「納期」「対応の態度」といった数種類から始めて、運用しながら足していくのが定着の近道です。お客様から寄せられた声を広く集めて傾向をつかむところまで広げたい場合はアンケート集計ツールの作り方で作った集計と区分をそろえておくと、二重に分類し直す手間がなくなります。
用意するもの
準備するのは次の3つだけです。特別な開発環境は必要ありません。
- Claude Code:指示を出すと、必要なファイルを自動で作ってくれます。導入手順はClaude Codeのはじめ方を参照してください。
- 過去のクレームの記録(数件で十分):担当者のメモを書き写したものでも、報告書のひな形でも構いません。Claude Code が自社で実際に何を控えているかをつかめます。
- 対応にまつわる社内の決まりごと(数行で十分):「一次回答は受付から一定の日数以内」「金額に関わる内容は上長へ報告する」「取引先からのものは営業担当にも共有する」といった、ふだん暗黙で回している約束事を数行そろえておくと、期限や振り分けの条件を自動で持たせられます。
クレームの記録には、お客様の氏名や連絡先、取引の内容といった個人情報や取引先の情報が含まれます。試す段階でも社内の情報の取り扱いルールに沿い、社外に出さない環境で作業してください。控える項目を対応の管理に必要なものだけへ絞っておけば、必要のない情報まで抱え込む事故も防げます。業務でAIを安全に使う考え方は業務AI利用時の情報漏えい対策で解説しています。なお、製品事故に関する報告の義務や、記録をどれだけの期間残すべきかは業種ごとの制度で決まっているため、何をどの形で残すべきかは最新の一次情報や管轄の窓口の確認と突き合わせてください。
Claude Codeへの指示と作成手順
ここからは、実際にClaude Code へ出す指示の流れを順番に見ていきます。専門用語は使わず、ふだんの言葉で頼むのがコツです。
第一段階:いまの記録をそのまま渡す。「お客様からの苦情を一か所にまとめて、対応が止まっているものが分かる仕組みを作りたい」と目的を伝え、過去の記録を数件分渡します。「受付日・お客様や取引先の名前・内容の区分・いまの対応状況を控えている」と、手元の管理の中身をそのまま言葉で伝えれば、Claude Code が台帳の土台を作ってくれます。まずは直近の数件を入れて、いつもの見え方で並ぶかを確かめます。
第二段階:期限を自動で置かせる。台帳が整ったら、「一次回答は受付から一定の日数以内、最終回答はそこからさらに一定の日数以内という社内の目安があるので、受付日から期限を自動で置いてほしい」と伝えます。ここが手作業で最も抜けるところなので、人が数えずに済む形にしておくのが肝心です。期限の数え方は土日祝を含めるかどうかで結果が変わるので、実際にありそうな受付日をいくつか入れて意図どおりかを確かめてください。
第三段階:止まっているものを先に見せる形にする。「期限が近いもの・過ぎたもの・担当者が決まっていないものを先に出してほしい」と伝えれば、全体を眺めなくても手を打つべきものだけが並びます。担当者ごとに抜き出せるようにしておくと、朝の打ち合わせでそのまま使えます。個別の対応そのものを追いかけるところまで広げたい場合はタスク管理ツールの作り方と組み合わせると、受付から社内の作業までが一つの流れでつながります。
第四段階:繰り返しを浮かび上がらせる。「同じ区分の件数を月ごとに数えてほしい」「似た内容が同じ商品や同じ工程で起きていないか教えてほしい」と伝えれば、個別対応では見えない繰り返しが見えてきます。件数の多い区分から手を打てば、そもそも苦情が起きない状態へ近づけられます。完成したら操作の流れをメモに残しておくと、担当が交代しても同じ形で回せます。よくある問い合わせへの一次回答を仕組み化するところまで進めたい場合は問い合わせ対応ボットの作り方もあわせてご覧ください。
つまずきやすい点と回避策
はじめて内製する方が引っかかりやすいポイントを、先回りしてお伝えします。
最初から分類を細かくしすぎること。原因の分類・重大度・再発防止の区分まで一度に作り込もうとすると、記録するたびに迷いが生じて入力されなくなります。まずは数種類の区分だけに絞ってください。分類が粗くても、件数が数えられるようになるだけで傾向は見えてきます。細かい区分は、台帳が実務で使われるようになってから足すほうが確実です。
対応方針の判断までツールに決めさせること。Claude Code は期限を過ぎたものを見つけるのは得意ですが、そのクレームにどう応じるかという判断まで肩代わりできるわけではありません。返金や交換に応じるのか、謝罪の範囲をどこまでとするのか、法務や上長へ上げるべきかは、その会社の考え方と個別の事情で決まります。対応の方針は人が決め、ツールは期限を過ぎているものや担当が決まっていないものの見張りに使う——この線引きを守ってください。お客様へ送る文面の下書きまで頼む場合も、送る前に人が必ず読むことを運用の決まりにしておくと安全です。
記録は増えるのに振り返らないこと。クレームの台帳は、たまった記録を定期的に見返して初めて再発防止につながります。記録だけが増えて誰も見ない状態になると、入力の手間だけが残ります。「毎週、期限を過ぎたものだけ確認する」「月に一度、件数の多い区分を見る」といった、見る場面を一つずつ決めておくのが効果的です。こうして流れを一度固めておけば、あとは同じ形で使い回せるのが内製の利点です。社内で作ったツールを長く使い続ける工夫は内製ツールの保守の進め方で解説しています。
まとめ:期限の見張りはツールに、対応方針の判断は人に
本記事の要点を整理します。
- クレーム対応で抜けが出る原因は担当者の熱意の不足ではなく、受付の入口が分かれたまま束ねて見る場所がないこと
- 作るのは「受付の記録→期限の設定→未完了の抜き出し→担当者ごとの一覧→繰り返しの洗い出し」の小さなツール
- 用意するのはClaude Code・過去のクレームの記録・対応にまつわる社内の決まりごとの3つだけ
- 控える項目は受付日・お客様や取引先・内容の区分・対応状況の四つから始め、分類を細かくしすぎない
- どう応じるかの対応方針は人が決め、期限を過ぎたものの見張りと繰り返しの洗い出しはツールに任せる
期限の見張りと繰り返しの洗い出しはツールに任せ、どう応じるかの判断は人が持つ——この役割分担を押さえれば、クレーム対応は「再連絡を受けて初めて気づく」状態から「期限が来る前に手を打てる」運用へ近づきます。まずは直近の数件の記録を、Claude Code に渡して台帳にするところから始めてみてください。問い合わせ対応の内製をさらに進める手順は問い合わせ対応ツールを5日で自作する手順で解説しています。研修費用の負担を抑えながら社内に内製できる人を増やす方法は生成AI研修に使える助成金もあわせてご確認ください。
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