飲食店の生成AI活用|店長がClaude Codeでシフト・発注・口コミ返信ツールを内製する

飲食店の店長がClaude Codeでシフト・発注・口コミ返信ツールを内製するイメージイラスト

シフト表づくり、取引先ごとの発注のまとめ、口コミへの返信——飲食店の店長は、料理やホールに加えて、こうした事務作業を閉店後や開店前のわずかな時間でこなしています。生成AIの話を聞いても「うちのような小さな店に関係あるのか」「結局ITに詳しい人がいないと無理だろう」と感じる方は多いはずです。本記事の結論はこうです。店長本人が、プログラミング経験ゼロのまま、自分の店の事務作業を片づける小さなツールをClaude Codeで内製できます。誰かに作ってもらうのではなく、自分の手で。本記事では、飲食店の現場で何を内製できるのかを整理し、店長が短期間で最初の1本を組み立てる進め方を、指示の具体例と注意点まで含めて解説します。

店長がシフト・発注・口コミ返信を内製ツールで片づける流れ
図:店長がシフト・発注・口コミ返信を内製ツールで片づける流れ

なぜ「使う」だけでなく「作る」のか

生成AIの飲食店向けの話というと、これまでは「ChatGPTにメニューの説明文を書かせる」「口コミ返信の文面をAIに考えてもらう」といった、できあがったAIに話しかける使い方が中心でした。それも便利ですが、毎回チャットを開いて、過去のやり取りを思い出しながら同じ指示を打ち直すのは、結局そのつど店長の手間がかかります。

本記事がおすすめするのは、その一段先です。シフト希望が書かれたメッセージを放り込めばシフト表のたたき台が出てくる、各曜日の在庫メモを入れれば取引先ごとの発注リストにまとまる——そんな自分の店専用の小さな道具を、店長自身が作ってしまう。一度作れば、次からは同じ作業を毎回ゼロから考えずに済みます。

そんなことが本当に未経験者にできるのか、と思われるかもしれません。Claude Codeは、やりたいことを日本語で伝えるだけで、その作業をこなす小さなプログラムの作成から実行までを対話で進めてくれるAIです。コードを自分で書く必要はありません。非エンジニアがツールを内製するという発想そのものは業務ツールを社内で内製する考え方の記事で詳しく整理しているので、あわせてご覧ください。飲食店を含む業種別の使い方の全体像は業種別・生成AI活用事例も参考になります。

店長が内製できる3つのツール

まずは、飲食店の店長が内製しやすい代表的なツールを3つ挙げます。いずれも「ルールは店長の頭の中にあるが、手作業でやると地味に時間がかかる」作業です。

  • ① シフト作成の下書きツール:スタッフから集めた勤務希望(LINEやメモ)を読み取り、必要な人数や役割の条件に合わせてシフト表のたたき台を作ります。最後の微調整は店長が行う前提で、まずは叩き台を自動で用意するのが狙いです。
  • ② 発注まとめツール:その日の在庫メモや「○○が残りわずか」といった記録から、取引先ごと・納品日ごとに発注内容を整理した一覧を作ります。発注先が複数に分かれている店ほど効果が出ます。
  • ③ 口コミ返信の下書きツール:寄せられた口コミの内容を踏まえ、お店の言葉づかいに沿った返信文の案を作ります。送信前に店長が必ず目を通す前提の、あくまで下書きづくりです。

3つに共通するのは、ツールに最終判断をさせない設計です。シフトを確定するのも、発注を送るのも、口コミ返信を投稿するのも、最後は店長。ツールの役割は、ゼロから手で作る手間を省き、店長が「直して決める」だけの状態まで持っていくことです。この線引きが、現場で安心して使える内製ツールの条件になります。

シフト作成のツールについては、組み立て方を一段深く掘り下げたシフト表の作成を自動化するツールを内製する手順があります。この記事の②に近い在庫・発注の仕組みは在庫アラートツールを作る手順が考え方の参考になります。

店長が5日で最初の1本を作る進め方

「ツールを作る」と聞くと身構えますが、最初の1本は数日あれば形になります。ここでは、店長が空き時間に少しずつ進める前提で、5日の流れに分けて説明します。なお、この日数は専任で張り付く必要があるという意味ではなく、1日あたり短い時間を区切って進める目安です。

1日目:いちばん面倒な作業を1つ選ぶ。シフト・発注・口コミ返信のうち、毎週確実に時間を取られていて、やり方が自分の中で決まっているものを1つだけ選びます。あれもこれもと欲張らず、最初は1本に絞るのが成功のコツです。

2日目:その作業のルールを言葉にする。たとえばシフトなら「土日は最低3人」「キッチンは必ず1人以上」「高校生は22時まで」といった、ふだん頭の中で判断している条件を箇条書きにします。ここが設計のいちばん大事な部分で、必要なのはプログラミングの知識ではなく自分の店のルールを言葉にする力です。

3日目:ダミーのデータを用意する。本物のスタッフ名や取引先名は使わず、まずは架空の名前と希望でサンプルを作ります。実在の個人情報をいきなり扱わないのが鉄則です。

4日目:Claude Codeに作りたいものを伝える。次の章のような指示を日本語で出し、ダミーデータで動かします。一度で完璧を狙わず、出てきた結果を見て「この条件も加えて」「この出し方に変えて」と対話で直していきます。

5日目:本番で使う前に取り扱いを確認する。実際のスタッフ希望や口コミを扱う前に、何をクラウドのAIに入力してよいかを整理します。問題なければ、まずは1週間分など小さい範囲で本番運用を始めます。最初の1本を組み立てる全体の型はClaude Codeで業務ツールを作る5ステップでも詳しく解説しています。

この「5日で自分の業務ツールを1本完成させる」という進め方は、当社AI CODEMYの法人向け研修がまさに採用している型です。エンジニアでない受講者が、自分の現場の課題を題材に、研修期間内に動くツールを作り上げます。飲食店の店長であれば、研修の題材がそのままシフトや発注のツールになります。

シフト作成ツールの指示の具体例

4日目に出す指示は、たとえば次のようなものです。ここではシフト作成ツールを例にします。

「このフォルダにあるテキスト(staff_kibou.txt)に、スタッフ名と勤務できる曜日・時間帯の希望が書いてある。これを読み取って、月曜から日曜までのシフト表のたたき台を作ってほしい。条件は、土日は各時間帯に最低3人、平日は最低2人、キッチン担当を必ず1人以上入れること。希望をすべて満たせない場合は、無理に埋めずに『人数不足』とわかるように空けておいて。結果は表(shift.csv)に出して。誰をどこに入れたかの理由も簡単に添えて」

このように、「何を読み取り」「どんな条件で」「どう出力し」「埋まらないときはどうするか」を具体的に書くのがコツです。あいまいな指示ほど結果がぶれます。逆に、ここを丁寧に言葉にできれば、店長がふだん頭の中でやっている判断をそのままツールに移せます。指示の組み立て方そのものは業務で使えるプロンプトの書き方が参考になります。

発注まとめや口コミ返信のツールも、考え方は同じです。「この在庫メモを取引先ごとの発注リストにして」「この口コミに、丁寧でかしこまりすぎない言葉づかいで返信の下書きを3案作って」というように、入力・処理・出力をはっきり伝えれば、店長の意図に沿ったたたき台が返ってきます。

飲食店で使うときの注意点

現場で使ううえで、押さえておきたい注意点が3つあります。

第一に、最終判断は必ず店長が行う。シフトの確定、発注の送信、口コミ返信の投稿は、ツールの出力をそのまま使うのではなく、店長が目を通してから決めます。ツールはあくまで、ゼロから作る手間を減らす下書き係です。特にシフトはスタッフの生活に直結するため、人の最終チェックを省いてはいけません。

第二に、入れてよい情報の範囲を決める。スタッフの個人的な事情や連絡先、取引先との金額条件など、慎重に扱うべき情報があります。何をクラウドのAIに送ってよいかは整理しておき、判断に迷う情報は入力しないのが安全です。入れてはいけない情報の考え方は生成AIに入力してはいけない情報リストにまとめています。

第三に、まず1つの作業で小さく始める。いきなり店の事務すべてを置き換えようとせず、最も時間を取られている1作業から試すと、効果も注意点も早くつかめます。1本うまく回り始めてから、次のツールに広げていくのが、無理のない進め方です。

研修費用に助成金を使う

店長が自分でツールを作れるようになるための研修には、まとまった時間と費用がかかります。ここで知っておきたいのが、従業員の職業訓練にかかる費用や賃金の一部を国が支援する助成金の存在です。代表的なものに、厚生労働省の人材開発支援助成金があります。

助成の対象や助成率、必要な手続きは制度の改定で変わるため、本記事では具体的な金額や率には踏み込みません。最新の要件は厚生労働省の公表資料を要確認のうえ、自店が対象になるかを判断してください。生成AI研修で使える助成金の全体像と、申請の流れの考え方は生成AI研修に使える助成金ガイドで整理しているので、研修の検討と並行してご確認ください。

まとめ:店長が「作る側」に回ると現場が変わる

本記事の要点を整理します。

  • 飲食店の生成AI活用は「使う」だけでなく、店長が自分の店専用のツールを「作る」段階に進める
  • 内製しやすいのはシフト作成の下書き、発注まとめ、口コミ返信の下書きの3つ
  • 進め方は、面倒な作業を1つ選び、ルールを言葉にし、ダミーで作って対話で直すという流れで、最初の1本は数日で形になる
  • 最終判断は必ず店長が行い、入れてよい情報の範囲を決め、1作業から小さく始める
  • 研修費用には人材開発支援助成金などが使える場合があり、要件は厚生労働省の公表資料を要確認

店長がツールを「作ってもらう側」から「作る側」に回ると、業者への依頼や追加費用を待たずに、現場の困りごとをその場で形にできるようになります。シフトや発注に追われる時間を、料理と接客に戻す——飲食店にとっての生成AI活用は、店長自身が小さな1本を作るところから始まります。

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執筆:AI CODEMY 編集部 / 最終更新:2026年6月27日