完成形のイメージ:何ができるツールか
まず、これから作るツールの動きを具体的にします。完成するのは「契約書のファイルを読み込ませると、自社のチェック観点に照らして注意すべき条項を一覧で指摘するツール」です。
- 入力:レビュー対象の契約書(テキストやWord、PDFから書き出した文章など)
- 処理:自社のチェックリスト(確認したい観点の箇条書き)に照らし、各条項を点検
- 出力:「どの条項が、どの観点で注意を要するか」「なぜそう判断したか」が分かる指摘一覧
大事なのは、このツールの役割が「契約の良し悪しを判定すること」ではなく「人が確認すべき箇所を先に絞り込むこと」だという点です。機械的に見つけられる論点をツールが洗い出し、人は重要な判断に集中する。この分担にすると、レビュー時間が減るだけでなく、見落としによる手戻りも減らせます。最終的な可否判断や法務の確認は、これまでどおり人が担います。
必要な準備:チェック観点と契約書サンプル
準備するものは3つです。いずれも手元にあるもので始められます。
- 自社のチェック観点の箇条書き:契約書を見るときに毎回確認している点を、日本語で書き出します。例:「契約期間と自動更新の有無が明記されているか」「中途解約の条件が一方的に不利でないか」「損害賠償の範囲や上限の定めがあるか」「秘密保持の対象と期間が妥当か」「準拠法と管轄が想定どおりか」。これがツールの“目”になります。
- 契約書のサンプル:過去の契約書を1通、テキストで用意します。練習段階では、取引先名や金額などを伏せたコピーを使うのが安全です。機密情報の扱いはAIへの情報漏えいを防ぐ社内ルールもあわせて確認してください。
- Claude Codeが使える環境:導入済みであればそのまま、まだの方は先にセットアップしておきます。
このうち最も重要なのが「チェック観点の箇条書き」です。研修の現場でよくあるのが、レビューの勘所が担当者の経験の中にしかなく、書き出してみると人によって見る点が違っていた、というケースです。ツール化は、暗黙の確認観点を組織の共有財産にする良い機会にもなります。
作る手順:指示例文をそのまま使う
準備ができたら、Claude Codeとの対話でツールを組み立てます。指示例文はそのまま使えるように書いてあります。
手順1:ツールの全体像を伝える
「契約書レビューの補助ツールを作ってください。契約書の文章を読み込んで、こちらが渡すチェック観点に照らし、注意すべき条項を一覧で指摘するものです。契約の可否を判定するのではなく、人が確認すべき箇所を絞り込むのが目的です。観点はこのあと渡します。」
最初の指示は、この程度のざっくりさで問題ありません。詳細は対話で詰めていきます。「判定ではなく補助」という役割を最初に伝えておくのがポイントです。
手順2:チェック観点と契約書を渡す
「これがレビュー対象の契約書サンプルです。チェック観点は次のとおりです。(1)契約期間と自動更新の有無(2)中途解約の条件が一方的に不利でないか(3)損害賠償の範囲・上限の定め(4)秘密保持の対象と期間(5)準拠法と管轄。各観点について、該当する条項があるか、なければ『定めなし』として指摘してください。」
ポイントは、観点を「自分の言葉で全部書く」ことです。とくに「定めがないこと自体が問題になりうる観点」(解約条件や賠償の上限など)は、“見当たらない場合も指摘して”と明示すると、抜け漏れの検知に役立ちます。
手順3:結果の見せ方を指定する
「指摘結果は表の形でまとめてください。列は、観点、対象の条項(何条か)、現状の要約、注意点、確認の優先度(高・中・低)、の5つにしてください。原文の表現は変えず、引用は短く添えてください。」
「なぜ注意なのか」と「優先度」まで出してもらうのがおすすめです。指摘の理由が添えられていると、人が確認するときの判断がそのまま進みます。表形式での出力はExcelをAIで自動化する実例の考え方とも相性が良い部分です。
手順4:実行して結果を確認する
「サンプルの契約書でこのツールを実行して、指摘一覧を見せてください。」
ここまでで最初の試運転です。この「課題を選ぶ→言葉で仕様を伝える→動かす」という流れの考え方は、Claude Codeで業務ツールを作る5ステップで体系的に整理しています。
動かして直す:自社の観点に合わせる
サンプルで動いたら、実際の契約書で試します。最初は、指摘しすぎ・指摘漏れの両方が出るはずです。それを言葉で直していきます。
「損害賠償の上限について、『上限の定めがない』場合は優先度を高に上げてください。当社では上限の明記を重視しています。」
「英文契約の場合もあります。英語の契約書でも、同じ観点で日本語の指摘を出せるようにしてください。」
このように、実際の契約書には自社ならではの重視点や例外が必ずあります。それを1つずつ対話で教えていく工程が、ツールを「自社のレビュー基準」に合わせる作業そのものです。あわせて、わざと不利な条項を入れたテスト用の文章で「ちゃんと指摘されるか」を確認しておくと、本番投入が安心になります。法務領域での活用の広がりは法務業務をClaude Codeで効率化する方法でも解説しています。
運用のコツと守るべき線引き
ツールが安定したら、運用に組み込みます。レビュー補助は特に「線引き」が重要です。
- 最終判断と法務確認は人が行う:ツールの指摘はあくまで一次的な気づきです。契約の締結可否や法的な妥当性の最終判断は、必ず担当者・法務・必要に応じて専門家が行うという線引きを明文化します。本ツールは法的助言の代替ではありません。
- 機密情報の扱いを決める:契約書には取引条件や個人情報が含まれます。どの情報をどの環境で扱ってよいかを事前に定め、必要に応じて伏せたうえで読み込ませます。
- チェック観点を育て続ける:トラブルや新しい論点が出るたびに観点を1行足していくと、ツールの精度は使うほど上がります。「この観点を追加して」と伝えるだけで反映できます。
契約書レビューの補助は、人の専門性を置き換えるものではなく、確認の入り口を整えて専門性を発揮しやすくするものです。この分担を守るほど、安心して日々の業務に組み込めます。
まとめ:人の判断の前に「論点を並べる」
本記事の要点を整理します。
- 契約書の要注意条項を洗い出す補助ツールは、非エンジニアでもClaude Codeとの対話で作れる
- 準備は「自社のチェック観点の箇条書き」「契約書サンプル」「Claude Code」の3つ
- 指示のコツは、観点を自分の言葉で書き、“定めがない場合も指摘して”と明示すること
- 実際の契約書の重視点や例外は、対話で1つずつ教えて自社基準に合わせる
- 最終判断・法務確認は人が行う線引きと、機密情報の扱いを必ず先に決める
論点を機械的に並べる作業はツールに任せ、人は重要な判断に集中する。契約書レビューは、その分担効果が出やすい業務のひとつです。まずは過去の契約書1通で試してみてください。
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